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【放送芸能】

歌って踊ってつながって 魅せる合唱「ショークワイア」

 「合唱」というと、学校で経験した、真面目で堅苦しいイメージがあるが、自由な選曲で歌って踊る「ショークワイア」が今、注目を集めている。海外ドラマ「glee(グリー)」で日本で広く知られるようになり、四月からはフジテレビで連続ドラマ「カエルの王女さま」(木曜午後10時)が放送中。百人のコーラスグループもメジャーデビューした。(宮崎美紀子)

 天海祐希主演の「カエルの王女さま」は、さびれた町の女性コーラスが、ブロードウェー帰りという触れ込みの天海演じる主人公のもと、ダンスを取り入れたショークワイアに取り組む物語。「今の閉塞(へいそく)感を打ち破るようなドラマを、と思って企画しました。変化を諦めた人たちが、ショークワイアを始めることで変わっていくところを見せたい」と渡辺恒也プロデューサー。

 こだわったのは、ただ見るだけではなく、視聴者が一緒に歌いたくなる曲選び。昨秋から会議を重ね、ピックアップした曲は三百曲以上。登場するのは山口百恵、米米CLUBなど誰もが知るヒット曲ばかりで、放送後に動画サイト「ユーチューブ」で配信しているドラマの歌唱シーンは三十万近く再生された回もある。

 番組発でショークワイアコンテストが三日に開催されるが、百三十九の応募があった。渡辺プロデューサーは「ドラマを見て活動を再開した、踊りも取り入れるようになった−という声をいただいた」と、人を動かす「歌+踊り」の力を実感している。

 この“魅せる合唱”ショークワイアのブームは、米国の連続ドラマ「glee」で火がついた。日本ではCS放送のFOXチャンネル、NHKBSプレミアムを経て、四月からNHKEテレで地上波に初登場した(土曜午後10時55分)。

 高校の合唱部の落ちこぼれたちがショークワイアを通して成長する青春ドラマ。クイーンなど大人好みの曲も多く使われているが、「予想以上に十代の女性の視聴率が高い」と黒岩美香チーフプロデューサーは話す。いじめられっ子や障害者といったマイノリティーがクワイアによって立ち上がるところに若い人は共感するようだ。

 また、ただの合唱ではなく、踊り付きであるところも、中学校の体育にダンスが取り入れられる昨今、若い人の心に届いたのではと黒岩さんは分析する。放送後のツイッターでその回に登場した曲が話題に上るなど、受動的ではなく能動的に見られているのも、このドラマの特徴だ。

◆身体表現のエネルギー「Be Choir」

 盛り上がりは、ドラマの中だけではない。5月にキングレコードからアルバム「BE(ビー)」でデビューした「Be Choir(ビー・クワイア)」は、リーダー・長谷川雅洋と100人以上のメンバーで構成される大所帯コーラス団。ゴスペル、ポップス、ヒップホップなどあらゆるジャンルを取り入れ、ステージと客席の一体化をモットーに活動している。

 長谷川は「合唱というと直立不動で歌うイメージだけど、うちは歌っても泣いても踊ってもいい。そして、見ている人がいかに楽しめるかを考えている」。メンバーは仕事を持つ人が多く、長谷川自身も現役銀行マン。歌が好きという共通項のもと、社会で磨いた特技をステージや練習に持ち寄っている。

 集い、歌い、感情をぶつけ合う。そんな合唱になぜ今、人は魅せられるのか。長谷川は経験に基づいて、こう話す。

 「インターネットでリアルタイムで何でもわかる時代だけど、においや音まで知っているわけじゃない。そういう身体的経験を省いちゃってる状態って、実は危ないのでは。でもライブは違う。その場でしか発生しないエネルギーを感じたいし、関わってほしい」

 

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