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【国際】

対フィリピン紛争海域 中国が漁船に補助金

南沙諸島から戻った漁船(後方)から降ろされる工芸品に使う加工用のサンゴ=渡部圭撮影

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 【海口(中国海南省)=渡部圭】中国とフィリピンが領有権を争い、両国の艦船がにらみ合う南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)などの紛争海域に向かう漁船に対し、中国当局が多額の補助金を支給していることが二十九日、分かった。出漁地である海南省の村の漁民らが証言した。当局は補助金を払って漁を奨励することで問題を顕在化させ、領有権争いを有利に運ぶ狙いとみられる。

 この漁村は、海南省東部にある人口三万人ほどの譚門(たんもん)鎮で、約百五十隻の遠洋漁船の基地だ。フィリピン海軍が四月十日、スカボロー礁での違法操業の疑いで立ち入り検査した二隻は譚門港から出港しており、一連の問題の発端になった。現在もこの二隻を含む多数の漁船が紛争海域の周辺に出漁している。

 検査を受けた漁船の船主(56)によると、スカボロー礁と、その南方の南沙諸島(英語名・スプラトリー)で操業する漁船は大きさに応じて毎年、地元の漁業関係部門を通じ「特定補助金」が支給されるという。昨年は三百トン級の船で三万元(約四十万円)ほど。別にディーゼル燃料の補助金もあり、一回出漁すれば、約三万元が払われる。補助金制度は二〇〇五年ごろから始まった。

 スカボロー礁周辺や南沙諸島は魚の種類が豊富な好漁場。一回の操業は約四十日で、七十万元(約九百万円)相当の水揚げがあれば利益が出るという。

 ただ、船主側は「最近は船が増え、魚は減った。燃料は高騰しており、補助金の増額と漁港の整備を進めてほしい」と要望は限りない。その一方、「補助金が公然化すると、フィリピンを刺激するのでは…」と不安を口にする漁民もいた。

 この村の漁民は先祖代々、スカボロー礁周辺で漁を続けてきたと主張。ある漁民は「黄岩島で操業することは祖国の領土を守ることだ」と言い切る。

 中国紙によると、この十年余りで、中国漁船がフィリピン海軍に拿捕(だほ)などをされたケースが十件ほどあるという。

 

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