節電を求める関電の説明に、質問を投げかける県内の市長たち=大津市内のホテルで
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「電力不足を避けるために仕方ない」「原発のない暮らしを目指すべき」。関西広域連合が福井県おおい町の関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を事実上、容認する声明を出してから一夜明けた三十一日、大飯原発から半径三十キロ圏内に入る県内では、受け入れる意見や不安な声が聞かれた。
大津市内で三十一日夜に開かれた県市長会。市長たちは、節電の協力を呼び掛けるために訪れた関西電力滋賀支店の和田野善明支店長に「原発が再稼働した場合の電力需給の見通しはどうなるのか」「運転期間を限定的に区切ることができるのか」と矢継ぎ早に尋ねた。
和田野支店長は、再稼働後も電気の供給力に不足があり、引き続き節電が必要なことや、期間を区切った運転はできるが、設備に悪影響が出る可能性を説明した。市長会は、関電に再稼働についての情報提供と、具体的な節電対策の説明を求める意見をまとめた。
再稼働をめぐっては意見が分かれた。長浜市の藤井勇治市長は市長会後に「暫定的な措置というのが世論の合意点。広域連合は社会的経済的大混乱を起こさないための苦渋の決断をした。認めざるを得ない」と理解を示した。半面、大津市の越直美市長や米原市の泉峰一市長は、慎重であるべきだという従来からの姿勢を崩さなかった。
関西広域連合の意思決定に冷ややかな首長も。野洲市の山仲善彰市長は「慎重姿勢を示して置いて、一転して容認していたのでは、地元に混乱が広がる。広域連合として説明をすべきだ」と訴えた。
大飯と美浜両原発から半径三十キロ圏内に約七千人が暮らす高島市では、市民の反応はさまざまだ。
同市勝野の主婦鎗分(やりわけ)ゆかりさん(46)は「原発が動かなくても何とかなるようみんなで努力するべきだ。節電や法律改正など対策を試してみればいい」、同市今津町今津の衣料品販売弘部純一さん(39)も「電気が15%足りないと言うならその分は我慢する」と再稼働に反対姿勢を明確にした。
一方、今津町松陽台のホテル勤務福田章さん(65)は「県や国の経済のことを考えると、代わりとなる電源が確保されるまでは、再稼働もしょうがない」と心境を吐露する。
高島市の西川喜代治市長は「大飯原発の地震や津波対策が着手していないのに先を見越した判断がされている。十分な安全対策をしてから再稼働してほしいという思いは変わらない。市民の命を守る者としては、分かりましたと言えない」と述べた。
(中尾吟、滝田健司、山口哲)
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