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05月31日 07:00
シャープに期待したい事
前回の投稿についてご意見頂戴しました。ありがとうございます。アップルも購入者・消費者としての顧客を完全に無視している訳ではないと、私ももちろんそう思います。ただ、圧倒的な価値観を生み出す創造の始まりは...
こんなことを言っている人がいる。
生活保護問題の本質は、その資金を得ているのは主に在日であり。その資金の一部が北朝鮮に送金されている可能性があることです。可能性、といっていますがほぼ事実でしょ。アメリカの諜報機関が資金の流れを追っているという情報もあります。北朝鮮のテロ政治を日本人の税金で支える日々。正直もう勘弁してください。
そこで、厚生労働省の最新の情報で「生活保護を受給しているのは主に在日」なのかどうかを確認してみた。結論として、まあ当たり前だが「主に日本人が受給しています」。
※河本準一氏叩きで見失われる本当の問題[絵文録ことのは]2012/05/25の続編です。
(旧: ) 生活保護受給者の97%は日本国籍まずは、「在日」か否かを問わず、「日本人と、日本国籍を有しない人の、生活保護受給状況」を調べてみよう。つまり、この数字は「在日」の数字よりも当然大きく、在日の人の受給数が少なくともこれ以上ということはない。
構成統計要覧(平成23年度)第3編 社会福祉 第1章 生活保護|厚生労働省
エクセルファイルでどなたでも見られますからご確認を。さしあたって必要なのは、
の三つである。3-4表で被保護「世帯」数、3-5表で被保護「実人員」数が判明する。これを3-10表の「日本の国籍を有しない被保護実世帯数・実人員」と比較すれば、簡単にその割合がわかるわけだ。
ただし注意したいのは、第3-4表・第3-5表には「(各年度1か月平均)」という但し書きがあることである。したがって、第3-10表の「延被保護実世帯数」「延被保護実人員」ではなく、「1か月平均」の方の数字を使わなければならない。
日本国籍を有しない人の統計は平成17年度(2005年度)~22年度(2010年度)の6年分が示されているから、これを表にまとめてみた。
年次 | 被保護 実世帯数 |
非日本国籍 実世帯数 |
割合 | 被保護 実人員 |
非日本国籍 実人員 |
割合 | 日本国籍 実人員 |
割合 |
17(FY2005) | 1 041 508 | 29 129 | 2.80% | 1 475 838 | 46 953 | 3.18% | 1428885 | 96.82% |
18(FY2006) | 1 075 820 | 30 174 | 2.80% | 1 513 892 | 48 418 | 3.20% | 1465474 | 96.80% |
19(FY2007) | 1 105 275 | 31 092 | 2.81% | 1 543 321 | 49 839 | 3.23% | 1493482 | 96.77% |
20(FY2008) | 1 148 766 | 32 156 | 2.80% | 1 592 620 | 51 441 | 3.23% | 1541179 | 96.77% |
21(FY2009) | 1 274 231 | 37 024 | 2.91% | 1 763 572 | 60 956 | 3.46% | 1702616 | 96.54% |
22(FY2010) | 1 410 049 | 41 681 | 2.96% | 1 952 063 | 68 965 | 3.53% | 1883098 | 96.47% |
平均 | 2.85% | 3.32% | 96.68% |
日本の国籍を有しない被保護実世帯数は、6年間を平均すると全体の2.85%。実人員ベースで3.32%となり、おおざっぱに言えば約3%だ。
実際の統計からいえば、「生活保護を受給しているのは、97%が日本人、3%が日本の国籍を有しない人」である。仮にこの「日本の国籍を有しない人」を全員「在日」だと仮定したとしても、「生活保護資金を得ているのは主に在日」というのは「デマ」ということになる(もちろん、これは最大限の見積もりである)。
そしてもちろん、「日本の国籍を有しない人」の中には、在日、正確には「特別永住者」以外も多数含まれる。ただし、その比率については統計では明らかにならない。
以上、「生活保護問題の本質は、その資金を得ているのは主に在日である」という部分は、前提が根本的に誤っていることが明らかとなった。
もし「在日が受給しているから」と思い込んで生活保護受給条件を厳しくするのであれば、実際に生活保護を受けているうちの大多数を占める「困窮した日本人」を追い詰めるだけの結果に終わる。どちらが真の「反日」なのか、よく考えるべきだろう。
外国人の中の特別永住者は18.7%、定住者の中でも33.4%念のため、外国人登録者数を確認しておこう。
法務省:平成23年末現在における外国人登録者数について(速報値)
「3 在留資格別 -第2表,第2図-」を見れば、「永住者(一般永住者・特別永住者)」と「非永住者」の比率がわかる。いわゆる「在日」と呼ばれているのは「特別永住者」であって、これは特別永住者の高齢化に伴って年々減っている。平成23年(2011年)末での速報値では、「特別永住者」は18.7%、前年度2.5%減である。
19(2007) | 20(2008) | 21(2009) | 22(2010) | 23(2011) | 構成比 | 対前年 末増減 |
定住者 内比率 |
||
総数 | 2152973 | 2217426 | 2186121 | 2134151 | 2078480 | 100 | -2.6 | ||
永住者 | 869986 | 912361 | 943037 | 964195 | 987519 | 47.5 | 2.4 | ||
うち一般 永住者 |
439757 | 492056 | 533472 | 565089 | 598436 | 28.8 | 5.9 | 51.3% | |
特別 永住者 |
430229 | 420305 | 409565 | 399106 | 389083 | 18.7 | -2.5 | 33.4% | |
非永住者 | 1282987 | 1305065 | 1243084 | 1169956 | 1090961 | 52.5 | -6.8 | ||
うち 定住者 |
268604 | 258498 | 221771 | 194602 | 177981 | 8.6 | -8.5 | 15.3% | |
定住者 合計 |
1138590 | 1170859 | 1164808 | 1158797 | 1165500 |
「1990年、厚生省より、生活保護対象外国人は定住者に限る、非定住外国人は、生活保護法の対象とならないと口頭で指示が出されている」が、「その後、基準が緩和され、自治体によっても対応が異なる」ようである(在日の生活保護の受給率は高い? - 児童小銃より)。
仮に「定住者のみ」とした場合、それは上記の統計では「永住者(一般永住者・特別永住者)」と、「非永住者のうち、定住者」の合計ということになる。この三者の合計は116万5500人。これを「外国人定住者の総数」という母数としよう。
そうすると、定住者のうち、一般永住者が51.3%、特別永住者(在日)が33.4%、非永住の定住者が15.3%という数字になる。つまり、「在日」は日本に定住している外国人の3人に1人という計算だ。
したがって、生活保護受給者の中に占める「在日」の人の割合は、最大でも3.3%、定住者比率から単純計算すれば1.1%となる。これを「生活保護資金を得ているのは主に在日」と言うのは、あまりにも無理がある。
生活保護受給者の比率「生活保護問題の本質は、その資金を得ているのは主に在日」という言説には根拠がないことはすでに明らかになったが、そうすると論旨をすり替えてくる人がいることは容易に想像できる。「在日の受給率が日本人より高い」というものである。この論旨に切り替えた時点ですでに問題点がすっかり変わってしまっているのだが、まあ一応数字を確かめておこう。
つまり、「日本人の中で生活保護を受けている人の割合」と「在日の中で生活保護を受けている人の割合」の比較で「在日の方が生活保護を受けている人が多い」という議論だ。もちろん、これがいくら多かろうと「主に在日が生活保護を受けている」ということにはならないわけだが、念のため検証する。
まず、日本の人口は統計局ホームページ/日本の統計-第2章 人口・世帯の2-1「人口の推移と将来人口」から明らかになる。ここで「日本の人口」から「日本人」を引けば、日本にいる外国人の人数がわかる。
次いで、被保護実人員から非日本国籍実人員を引いた数を計算する。これが「日本人の受給者数」である。これを「日本人」の人口で割る。これで「日本国籍を有する日本人の中で、生活保護を受けている割合」がわかる。その結果は6年間の平均で1.26%、ただし年々増えている。
一方、非日本国籍実人員を「日本の人口-日本人」の数字で割る。その内訳はわからないが、とにかく「日本国籍を持たないが日本にいる人の中で、生活保護を受けている割合」がわかる。その結果は6年間の平均で3.27%だ。
年次 | 被保護 実人員 |
日本人人口 | 割合 | 非日本国籍 実人員 |
日本在住の 外国人人口 |
割合 | |
17(FY2005) | 1 475 838 | 1 428 885 | 126,205,000 | 1.13% | 46 953 | 1563000 | 3.00% |
18(FY2006) | 1 513 892 | 1 465 474 | 126,154,000 | 1.16% | 48 418 | 1616000 | 3.00% |
19(FY2007) | 1 543 321 | 1 493 482 | 126,085,000 | 1.18% | 49 839 | 1686000 | 2.96% |
20(FY2008) | 1 592 620 | 1 541 179 | 125,947,000 | 1.22% | 51 441 | 1745000 | 2.95% |
21(FY2009) | 1 763 572 | 1 702 616 | 125,820,000 | 1.35% | 60 956 | 1690000 | 3.61% |
22(FY2010) | 1 952 063 | 1 883 098 | 126,382,000 | 1.49% | 68 965 | 1675000 | 4.12% |
平均 | 1.26% | 3.27% |
確かに「日本人の中で生活保護を受けている割合」より「外国人の中で生活保護を受けている割合」は多い。比率にして約3倍となる。ネットでは「日本人の22倍も生活保護受給率」と書いているページもあるが、実際にはこの数字である。ただし、この「外国人」の中でどれくらいが在日かということは統計上はわからない。
ここではその解釈には踏み込まない。なぜなら、仮にこの「外国人」すべてを「在日」と置き換えることが可能であったとしても、そこには二つの解釈ができるからである。
一つは「在日が在日権益のゴリ押しで生活保護を受給しているのではないか」「日本人より基準が甘いのではないか」という見方(あくまでも解釈であって事実かどうかは別問題)。
もう一つは、「在日外国人は日本国籍を有する人より困窮している」「いわゆる在日と呼ばれる特別永住者は高齢化が進行しており、それに伴って生活保護を必要とする困窮の度が増している」という見方。
ここでは統計を示すのみにとどめ、解釈を選ぶことはあえてしない。ただ、この統計の結果が一つの「結論」を示すと言い切るなら、それは暴論ということである。また、この計算結果はそれぞれの母集団内での比率の比較なのであるから、「主に在日が生活保護を受給している」という結論には当然ならないのは念を押すまでもないだろう。
「北朝鮮のテロ政治は日本人の税金を原資とした生活保護によってまかなわれている」?「資金の一部が北朝鮮に送金されている可能性があることです。可能性、といっていますがほぼ事実でしょ」というのだが、確かに「一部」はそういうこともあるだろう。
しかし、生活保護総額の3%が「日本国籍をもたない人」たちが受給していて、それが100%「在日」だとしても、そのうちの朝鮮籍の人はどれだけなのか。法務省統計では「韓国・朝鮮」と一括して統計されており、国の統計では特別永住者の韓国籍:朝鮮籍(:台湾)の比率はわからない。
2010年の政府統計「国籍(出身地)別在留資格(在留目的)別外国人登録者 」によれば、特別永住者39万9106人のうち、いわゆる「在日」と呼ばれる韓国・朝鮮人が39万5234人。一方、ウィキペディアの「在日韓国・朝鮮人 - Wikipedia」ページによれば、その中で「韓国に本籍地があっても朝鮮籍のままの者もいるため、北朝鮮地域を本籍地にしている者は2010年末時点で2,589人に過ぎないが、朝鮮籍保持者は3-4万人程度いるとみられている」と書かれている(北朝鮮とは国交がないので、韓国籍がいやなら「朝鮮籍」となる)。この「朝鮮籍保持者」は韓国籍を選ばなかったということで北朝鮮政府に親和性のある人たちだとすれば、39万5234人の「在日」の中に「北朝鮮系」の人は多く見積もっても1割しかいないということになる。
40万人中4万人である。1割である。
したがって「在日権益」をそのまま「北朝鮮」に結びつけるのはあまりにも飛躍がすぎるということだ。一部は本当に「一部」の可能性が高い。もちろんゼロではあるまい。だが、ゼロではないからといって、「生活保護を受けているのは主に在日で、だからその資金は北朝鮮に流れている」と主張するとすれば、その主張には統計から見ても二重の飛躍があるわけだ。
仮に生活保護を受給している3%の外国人がすべて在日であり、朝鮮籍の人はその全額を北朝鮮に送っているという最大限の数字を採用したとしても、生活保護を受給している中の朝鮮籍の人の割合は全体の0.3%である。これをもって「資金を得ているのは主に在日」「北朝鮮のテロ政治を日本人の税金で支える日々」というのはあまりにも誇大であり、もはや妄想の域に達しているといえる。
なお、わたしは今のところ、CIAなりFBIが「生活保護で受給した金の流れを調査している」という情報のソースを確認し得ていない。CIAとかFBIは、革マル派などの妄想型陰謀論でよく登場する機関でもある。もし、「資金の流れを追っている」というのが単に「北朝鮮が集めている資金」すべてのことを指すのであれば、ここでそのことを持ち出すのは単なる誤誘導でしかない。
ましてや、河本氏の家族のことをここに絡めるのであれば、氏の家族・親族が「特別永住者」であるということについて、「憶測」や「決めつけ」ではなく「揺るぎない事実の証明」が必要だ。
生活保護は生活保護、北朝鮮への送金はまた別の問題もう一度事実関係をまとめておこう。
この事実を踏まえた上で、もう一度冒頭のこの文面を読んでいただきたい。
生活保護問題の本質は、その資金を得ているのは主に在日であり。その資金の一部が北朝鮮に送金されている可能性があることです。可能性、といっていますがほぼ事実でしょ。アメリカの諜報機関が資金の流れを追っているという情報もあります。北朝鮮のテロ政治を日本人の税金で支える日々。
北朝鮮への資金の流れを解明することは重要である。しかし、生活保護をそれと絡めるという「事実から乖離した陰謀論」にはまるならば、かえってその目的を阻害することになる。そして、事実ではない観測から、実際には受給者の97%を占める日本人困窮者を苦しめることになるのである。
最後に一言事実か否かは、「誰が言っているか」で決まるわけではない。わたし個人の属性等に関する人格攻撃を展開した上で「こんな奴が言ってるから間違い」と言うのは、言論ではなく、言葉を用いた暴力であり、そのような手段を使った時点ですべて無効である。
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