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空手家・大山倍達氏死後の極真会館分裂の歴史をつづる「大山倍達の遺言」(新潮社、2310円)が、その生々しい内容から話題を呼んでいる。著者はライターとして騒動を見続けていた、編集プロダクション・夢現舎代表取締役社長の小島一志さん(53)と同副社長の塚本佳子さん(40)。小島さんいわく「仁義ないどころじゃない戦い」だった権力闘争を通じ、2人は何を伝えたかったのか。
「分裂騒動に関わった人は100%、大山総裁の心を踏みにじった裏切り者です」。著者の一人、小島さんは言い切る。本書では、その騒動時の会議の発言が克明に記されるなど、人間の権力闘争の醜さを生々しく表現している。
94年4月の大山総裁死後、極真会館は「分裂」を繰り返した。総裁死去直後の通夜・告別式の段階で、早くも松井章圭氏を後継者とする遺言書(後に裁判で無効に)などをめぐって紛糾。95年には「松井派」、反対勢力の「支部長協議会派」「遺族派」と3派に分裂した。その後は離合集散を重ね、現在は極真会館(松井派)、新極真会、極真館、極真連合会など多くの極真系団体が存在する。
取材は難航を極めた。ほとんどの関係者が当時のことを語りたがらなかったからだ。小島さんは「大山総裁が築き上げたものを崩した原罪は、全員が意識してますから」。それでも「数え切れない」(小島さん)ほどの関係者を一人ひとり説得し、長い時間をかけて聞き込んだ。
「(塚本さんの)担当分を書いたあとに自分が加筆したんですが、手を付け始めて2年間、ほぼ何も書けなかった」。自らも極真空手を学んだ一員。それだけに、総裁の身内の問題について書くことなど、精神的につらい作業もあった。
熱狂的な格闘技ブームも一段落した今、著者2人が懸念するのは、極真を作った大山総裁の心を忘れてしまうことだ。「今、この状況で求心力を持つのは大山総裁の存在。だけど、極真の歴史や総裁の教えをきちんと伝えないと、その存在自体をゆがませてしまう」と塚本さん。「今は、各派が自分たちの都合のいい歴史を作っている。ライターとしての客観的な立場で、極真の歴史書を作らないといけないと思った」。2人の一致した思いは、極真が新しい一歩を踏み出すことなのだ。
◆小島 一志(こじま・かずし)1959年1月12日、栃木県生まれ。53歳。早大商学部から83年に福昌堂入社、「月刊空手道」編集長を経て、89年に自ら(株)夢現舎を設立。現代表取締役。段位を持っている極真空手、柔道をはじめ、居合、剣舞など格闘技を経験。著書に「極真空手 黒沢浩樹―最後の超人伝説」、塚本佳子氏との共著で「大山倍達正伝」など。
◆塚本 佳子(つかもと・よしこ)1972年4月3日、茨城県生まれ。40歳。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、91年に夢現舎に入社。02年から同取締役副代表。著書に「極真空手 甦る最強伝説」「女性がキケンから身を守る24の方法」(小島一志氏との共著)など。
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(2012年5月29日06時00分 スポーツ報知)