被爆者援護:「黒い雨」地域拡大せず 厚労省検討会報告
毎日新聞 2012年05月29日 20時51分(最終更新 05月30日 00時02分)
広島への原爆投下直後に降った放射性物質を含む「黒い雨」を巡り、厚生労働省の検討会は29日、体験した住民への身体的影響は認めず、「放射能への不安の軽減は重要」と精神的ケアに限定した意見を盛り込んだ報告をまとめた。被爆者援護対象区域の拡大につながる新たな降雨地域の認定は困難と改めて結論付けた。厚労省は今後、援護区域(健康診断特例区域)拡大を求める広島市などの要望を慎重に判断する。
同市が08年に実施した「原爆体験者等健康意識調査」では、黒い雨を体験したとの回答が広範囲にわたっていた。このため、被爆者援護法に基づいて健康診断を無料で受けることなどができる区域を現行(爆心地から北西方向に長さ19キロ、幅11キロ)の約6倍にするよう国に要望していた。
しかし、検討会は「市の調査で降雨の体験率が50%を超える地域は、援護区域外では一部に限られる」とした今年1月の作業部会の報告を了承。援護区域の指定には「科学的・合理的な根拠が必要」とし、市の調査はデータ不足と判断した。