これが言いたい:韓国で活発「ネット選挙」=明治学院大学法学部教授・川上和久
毎日新聞 2012年05月31日 東京朝刊
◇功罪学び日本でも定着を
韓国はネット選挙の先進国だ。00年4月の総選挙では、市民団体が「不適格候補者」のリストをネットで公表し、落選運動を展開して効果をあげた。
しかし、ネット選挙が大きな影響を持ったのは02年の韓国大統領選挙だ。このときの選挙では、出馬した7人のうち6人がネット上で公約や遊説日程を公開した。当初、有力候補とは見られていなかった盧武鉉(ノムヒョン)候補の陣営では、新千年民主党のホームページに1日平均約40万件のアクセスがあり、李会昌(イフェチャン)候補のハンナラ党の約15万件に大きく差をつけた。進歩系のネット新聞「オーマイニュース」も、読者がネット上で熱い議論を交わし、投票当日にかけてのアクセス数は、一晩で600万件以上に達した。
また、私的応援団がネット上で支援活動を行ったが、盧氏を支援する「ノサモ(盧武鉉を愛する人々の会)」がネット上での強力な当選の原動力となった。
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ネットが選挙での当選への原動力となる背景には、韓国の有権者が、選挙の際の情報源としてネットをもっとも利用するというお国柄も反映されている。テレビや新聞などの既存メディアの政治情報への不信感がネット利用を促しており、その点、テレビや新聞が選挙時の有力な情報源となっている日本と異なる。