社説
電源をどうする/脱原子力を明確にすべきだ
将来の電力をどんなエネルギーで支えるのか、経済産業相の諮問機関である総合資源エネルギー調査会が幾つかの選択肢をまとめた。 焦点になるのは無論、原子力の扱い。福島第1原発事故によって安全性への信頼が地に落ち、民主党政権が「脱原発依存」を模索している。中長期的な視点で、原子力問題を議論するのは当然のことだ。 調査会は2030年の電源構成として原子力比率0%、15%、20〜25%を示した。これに「具体的比率を設定せず」も加えた4案がたたき台となった。近く関係閣僚による「エネルギー・環境会議」に報告され、どれを選ぶか最終的に決めることになる。 発電コストや温室効果ガスの排出量、新エネルギーの実現可能性など、判断に当たっての物差しはいくらでも考えつくが、福島第1原発事故を教訓にするなら、最も重視しなければならないのは事故が起こった場合の影響度だ。 「最悪の場合、国家の機能が崩壊しかねなかった」。菅直人前首相が28日、国会の原発事故調査委員会でそう話した。底なしのリスクを抱えかねない発電方式は、そもそも選択不可能ではないだろうか。 実現の手順などはさらに議論を深めるにしても、原子力依存からの早期脱却という目標を国内で共有すべきだ。 今後のエネルギー政策を話し合ったのはエネルギー調査会の基本問題委員会のメンバーだが、本来なら一つの結論を導き出すべきだった。 選択肢を示すだけでは、役割を全うしたとは言い難い。原子力をめぐって推進と廃止のメンバーがおり、両論併記になるしかなかったのだろうが、結局は何も決めていないのと同じだ。 三つの数字のうち、原発事故前の発電比率(26%)と大して違わない20〜25%は現実問題として選択できないだろう。 事故の現場となった福島県が既に、第1、第2原発の原子炉10基の廃止を求めていることを考えれば、実質的には現状維持にすぎない。 0%は原発を徐々に廃止し、30年にはゼロにするという内容。地震や津波の危険性、老朽化などを考慮して廃炉を進めていくことになるとみられる。 温暖化対策や発電コストで多少のデメリットはあるだろう。ただ、原子力災害を再び起こさないことを最優先にするのは、多くの国民の理解を得られるのではないだろうか。 15%は二つの案の中間だが、かなりの規模で原子力発電を続けていくことになり、使用済み核燃料が確実に増えていく。青森県六ケ所村で再処理事業を続行するにせよ、地層処分に変更するにせよ、相当の負担を覚悟しなければならない。 使用済み核燃料を限りなく増やしていくようなエネルギー政策は既に破綻している。これからの世代に先送りするだけであり、その重荷のリスクも重要な判断材料になるはずだ。
2012年05月31日木曜日
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