サプリメントを安全かつ効果的に摂るための心得
知識不足が危険を招く

NPO日本サプリメント協会 代表理事 後藤典子 氏


 コンビニエンスストアやドラッグストアで手軽に入手できるようになり、サプリメントは今や身近な存在となった。しかしその一方で、ダイエット用サプリメントなどによる死亡事故などの健康被害も後を絶たない。サプリメントは薬と違い、医師の処方や飲み方の指導がないため、一体何をどれくらい飲めばいいのか戸惑う人も多い。サプリメントにまつわる危険性と、安全かつ効果的に摂るためのコツを、NPO日本サプリメント協会代表理事の後藤典子氏に聞いた。

聞き手、文/太田万紀子、写真/渡徳博
2005年11月9日

サプリメントにまつわるリスクとは

――健康のために飲むサプリメントには、どのようなリスクがありますか?

NPO日本サプリメント協会
代表理事 後藤 典子氏

後藤:
 薬や食品に比べて、サプリメントに際立ったリスクがあるわけではありません。しかし食品と違い、サプリメントは無味無臭なうえ、抽出した成分を凝縮したものなので、ある成分だけを多量に摂ることが可能となります。一度に多量の醤油や塩を飲むことはできませんが、サプリメントは1瓶飲むこともできてしまいます。そのため起こるリスクが、ある成分を必要以上に摂り続けてしまう“過剰摂取”です。

 また高血圧や高脂血症、高血糖などで薬を飲んでいる人は、薬との相互作用に注意が必要となってきます。食品でもグレープフルーツはさまざまな薬との相互作用があると言われますが、サプリメントの場合、イチョウ葉エキスやマリアアザミなど、食品ではないものが原料になっているものも多いため、薬との相互作用のリスクは非常に高いといえます。薬を飲んでいる場合は専門医や担当医に相談して情報を入手してからでないと、逆に身体に支障を来す場合も考えられます。

 また人によって効果に違いがあるため、摂取の際は自分の体調も考えないと危険です。たとえば、ウコンは肝臓にいいといわれていますが、肝硬変や肝炎の人がウコンを摂ると、肝臓を無理に働かせることになり、消化管に障害を起こす場合もあります。

――サプリメントはどういう目的で飲むべきでしょう?

後藤:
 基本的に、“身体の受け入れ態勢が健全である”という前提で摂ると覚えておきましょう。病気でない不調は、栄養のアンバランスや、必要な栄養の不足が原因だと考えられるため、サプリメントが効果を発揮します。サプリメントで必要な栄養素を補給することで、免疫力が高まったり、全身の体調を調節する機能を高めることが可能です。

 サプリメントは見た目は、確かに薬のようです。しかし薬を飲むような感覚で、“悪くなったらサプリメントを摂取する”と考えるのは間違いです。サプリメントは、あくまで病気になる前に飲むもの。例えば肩こりや冷え性、目が疲れる、寝起きがつらいといった、日常生活のなかで抱えている不調から解放された、最上健康(オプティマムヘルス)を実現するためのものです。健康がベースになって、自分の人生の目的をかなえることができる。そのための手段としてサプリメントがあるのです。

――過剰摂取の例を教えてください。

後藤:
 過剰摂取と健康被害の因果関係を、科学的に確証するのは難しいのが現状です。しかし、サプリメントが原因と考えられる例もいくつかあります。以前、脂肪分だけを吸収しないで外に出すという、脂肪吸収阻害機能のあるダイエット用サプリメントを1年ほど摂っていた人が、原因不明のめまいで入院するというケースが以前ありました。脂肪は体に必要なとても重要な栄養素です。しかしその吸収を阻害するサプリメントを常用していたため、栄養のバランスが崩れ、めまいが起きたのではないかといわれてれます。実際、その人はサプリメントの摂取を止めたら、めまいもなくなったそうです。

 また、血液がサラサラになるといわれるイチョウ葉エキスやビタミンE、EPA、DHAなどを摂り続けていると血が止まりにくくなる場合があると報告されています。ビタミンCを過剰摂取すると下痢になったり、消化吸収力が衰えている状態でプロテインを摂ると、腸内に残ったたんぱく質が消化不良を起こし、ガスが出たり、下痢や便秘になることもあります。青魚にアレルギーがある人はEPAやDHAでアレルギー反応が出ることもあります。ナイアシンを摂りすぎると、皮膚に赤い発疹がでる『ナイアシンフラッシュ』という症状もあります。こういった症状は、サプリメントを摂るのを止めたり、量を減らすことでたいていは治まるので、何か不調を感じたらすぐにやめる、という心掛けが大切です

――サプリメントを摂る際の注意事項を教えてください。

後藤:
 1日の目安量を守ること、不調が出たら止めることはもちろんですが、ただ飲むだけではいけません。五感を働かせて効果が体感できているかどうかをチェックするようにしてください。髪や肌の色つやを始めとして、肩こりや冷え、寝起き、体力など、朝顔を洗うとき、鏡を見たときなどさまざまなことを意識して、「効いている」という実感があるか確かめてください。効果の表れ方は人それぞれ。1週間で効いたと感じられる人もいれば、1カ月ほどかかる人もいます。自分に合っているかどうかを見るには、1カ月前後を目安にするといいでしょう。身体は常に新陳代謝をしており、3カ月で全部入れ替わるとされているので、最長でも3カ月くらいで判断してください。

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