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12.05.28

青年マンガ

大々々反響『キン肉マン』新シリーズ人気の秘訣とは? ゆでたまご両先生に聞く〝復活!火事場のマンガ製作裏話〟 第2回

昨年2011年11月より「週刊プレイボーイ」公式ニュースサイト「週プレNEWS」(http://wpb.shueisha.co.jp/)にて、24年ぶりの週刊連載復活を果たし、現在も大好評WEB連載中の『キン肉マン』!
その新シリーズ開始以降、初のコミックスが、かつての続刊「ジャンプ・コミックス」第38巻として2012年4月4日(水)に発売されると、即日完売となる書店が続出! なんと翌日に重版が決定されるほどの人気ぶりを見せつけた!!
華麗なる復活を遂げたこの名作作者・ゆでたまご(原作担当・嶋田隆司、作画担当・中井義則)両先生に、今シリーズの人気の秘訣や製作上の裏話、さらには今後の展望まで、様々なお話を伺った!!


――スピード感を感じる今回のシリーズ、直前までの『Ⅱ世』と意識して、差別化されている方法論などありますか?
嶋田:その話の前にまず言っておきたいのは、『Ⅱ世』は『Ⅱ世』なりに、ボクらにはすごく愛着があるということです。なにせ14年もやってきた作品ですし、アニメ化もされましたし、これはこれで初代とはまた違った魅力をたくさん作れたとも思っています。実際、ファンの中には『Ⅱ世』から好きになってくれたという人も大勢いて、ボクは個人的にツイッターをやっているんですけど、今回、初代の新シリーズを始めてから途端に、全くボクにツイートしてこなくなったファンの人も、実はたくさんいらっしゃるんですよ。
――それはそれで少し寂しいですね。
嶋田:でもボクとしては寂しい反面、これはすごく嬉しいことでもありました。なぜなら「ああ、そんなに『Ⅱ世』のことを愛してくれたんや」って思えたから。だから『Ⅱ世』のファンの人には悪いことをしたなぁと思っているところも多々あるんですが、それでも初代に戻す決断をした以上、『Ⅱ世』と同じことを続けるのではなく、新シリーズの魅力を出していかないとな…と考えているんです。
――具体的には?
嶋田:『Ⅱ世』の最終話から現行シリーズの第一話まで、読切を挟んだりしたので、空いている期間はわずか1か月程度なんですが、その間に中井君とも徹底的に相談をしました。それでまずは画風に関して、再び当時の雰囲気にやや戻すつもりで描いていこう…という話は、かなりしましたね。
中井:キン肉マンやテリーマンは『Ⅱ世』でも出てきたんですが、やっぱりそこでは息子のいる親なんで、表情がやや硬く、多少老成してしまった感もあったんですよ。でも彼ら本来の持ち味を出すには、もうちょっと若々しい雰囲気にしたいな…というのは、常々課題としていた部分であったので。ちょうどいい機会だなと。
嶋田:テリーマンも本来の荒々しい雰囲気を出すために、髪の毛を昔みたいにロングに戻してみよう…とかね。ボク個人的には短髪の方が好きなんですけど、その前の読切で長髪時代のテリーマンを描いたら、すこぶる評判が良かったので。
中井:新シリーズに入る前に、若い頃のキン肉マンとテリーマンの読切を描いたんですよ。ぶっつけ本番で連載に入るのではなく、そこで色々とテストできたのも大きいですね。他にも最近は仕上げでスクリーントーンを貼り過ぎて、絵が重くなっていた印象も大きかったので、ここらで心機一転してスッキリさせよう!…とかね。
嶋田:ボクのシナリオの部分では、試合や会話のテンポを大きく見直しました。『Ⅱ世』では技の攻防をしっかりリアルに描くことに重きを置いていたところもあるんですが、細かくやればやるほど、どんどんページを食ってテンポが悪くなる。それが行きすぎていた感もあったので、新シリーズではそのバランスを再びしっかり見直したいと。


(写真左:中井義則先生/写真中央:キン肉スグル氏/写真右:嶋田隆司先生)

――確かに一試合ごとの決着は、かなりスピーディになりましたね。
嶋田:ええ。ただ、なんでもかんでもサクサク進めればいいというわけでもないので、そこはしっかり全体の展開や各試合の重要度を見極めながら…ですけどね。他にも超人は出し惜しみせず、どんどん見せて行く。具体的に言うと今回、新たな敵超人軍団を出す際に、先にある程度まとまった人数をドカッと見せることにしました。多分『Ⅱ世』の時のボクの方法論なら、これは全員フードをかぶせておいて、少しずつ小出しにしていたと思うんです(笑)。でも今回は先にある程度、手の内を明かして見せてしまうことにした。そうすると後戻りできなくなりますけど、同時にこいつをなんとかして育てないと…という決意も生まれてくるんです。昔は、そうやって苦労しながらキャラクターを育てていたなって思い出したので。それに先にドカッと出しておくと、キャラクター単体ではなくチームとして見せることもできる分、横のつながりも構築できますからね。
中井:そうしてどんどん昔の方法論を思い出したり、変えるべきところは積極的に変えようとしているから、相棒の原稿もますます気分的に乗ってきていますよね。FAXで送られてくる原作を見るのが、ボク自身も毎週、楽しみになっているほどです(笑)。
嶋田:それは中井君の絵にしてもそう。ボクと同じ50歳を超えたこの歳になっても今なお画力が向上し続けているのが本当にわかるし、それが単純に嬉しくもあり、また同時に誇りでもあるんです。絵に力があふれてるもんな。
中井:それは非常に単純なこだわりでね。ちょうどボクらが漫画家になった30年程前の漫画界では、「ペンタッチ」という言葉が漫画上達のひとつのキーワードになっていたんです。漫画賞の審査員の先生方もことあるごとに「ペンタッチがなってない」とか仰っていてね(笑)。その意識が若い頃から刷りこまれているせいで、ペンタッチを未だにボクは大事にしているんですけど、一方で今の若い人は皆一様に線が細い。ペンタッチなんて概念はもうとっくに廃れてしまった感すらある。そういう時代だからこそ、ボクは昔ながらの漫画界がこだわってきた「ペンタッチ」にこだわりたいんですよ。
――なるほど。でもその中井先生の線に込められた力強さが、そのままキャラクターの力強さに直結しているように感じられます。
中井:相棒のシナリオにしてもボクの絵にしても、そうやってボクらの思う「昔ながらのカッコ良さ」というか「泥臭さ」をどんどん積極的に出して行こうというやり方が、あえて言うなら『Ⅱ世』ではなく、初代だからこそますます映えているのではないかと思います。それでいて昔の直すべきところは直している。例えばコマ割りにしても、昔のジャンプ時代の原稿を今、見直すと、非常に大事な場面にも関わらず「なんでこんなアッサリ見せているんだ?」という、できれば描き直したいくらいの反省点はあちこちに見受けられるんです。でも今なら経験もあるのでそういう描き方は絶対にしませんから。その古さと新しさの両方を使い分けて出せるのが、今のシリーズ最大の強みですかね。
嶋田:まさに今、中井君の言った通りですね。そうやって今、本当に描きたいと思うものを素直に正直に、なおかつ納得して出せている現状は、作家冥利に尽きるし、幸せだとも感じます。

(続きは5/29(火)に掲載します!)


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●ゆでたまご両先生に聞く〝復活!火事場のマンガ製作裏話〟第1回