時事深層

東電再建計画、地元は「NO」

2012/05/30
編集委員 田村 賢司  【プロフィール

 2007年には新潟県中越沖地震で火災が発生し、原子炉が緊急停止するなどの事故もあり、経済優先の声の裏で不安はくすぶり続けていた。その不安感が今回は噴出。柏崎刈羽原発の下請け業者の経営者さえも「今は再稼働賛成と大きな声では言いにくい」と言う。

 同じく同原発に商品を納入する別の業者も、「飲食など厳しい業界もあるだろうが、ほかは(発電が止まっていても)すぐに仕事がなくなるわけではない。今はじっとしておくしかない」とあきらめ顔で打ち明ける。

知事、市長に対立候補なし

 柏崎市にしても、原発立地周辺市町村に出される電源3法交付金や原発の固定資産税など、原発による収入が歳入総額に占める比率は約15%(2009年度)程度。同じく再稼働の動きがある関西電力大飯原発の地元、福井県おおい町の約50%(2010年度)などと比較すると大幅に少なく、毎年の歳入レベルではほかの原発立地地域よりは原発漬けではなくなっている。

 こうした状況を敏感に反映しているのが今年10月に予定される新潟県知事選と同12月の柏崎市長選、刈羽村長選。現職の首長のうち、再稼働賛成派は刈羽村の品田宏夫村長だけ。泉田裕彦知事は「再稼働を前提とした議論はしない」と言い続けており、会田洋・柏崎市長もほぼ同様ながら、対立候補擁立の動きは経済界からも全くない。

 総合特別事業計画は認定されても、東電の再建と原発事故への補償を含めた本当の計画作りはこれから始まるようなものだ。

日経ビジネス 2012年5月28日号18ページより

東日本大震災の発生以来、日経BP社は「復興ニッポン」などを通じ関連報道に取り組んできました。その報道と最新の取材を基に、全社を挙げて震災後1年を検証・分析し、今後を考えるのがシリーズ「復興大全」です。

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田村 賢司(たむら・けんじ)

日経ビジネス編集委員。

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