【東京】米金融大手のJPモルガン・チェースの従業員がインサイダー情報を資産運用会社に漏えいしていた疑いで、証券取引等監視委員会(SESC)が調査を行っている。事情筋が29日明らかにした。
同社は、ロンドン部門で起きた20億ドル(約1600億円)の投資損失問題で今月、米証券取引委員会(SEC)から調査を受けることが明らかになったばかり。日本市場は同社にとって比較的小さな市場ではあるものの、この展開次第ではまた新たな打撃となりかねない。
同社は29日、監視委のインサイダー疑惑調査に「全面的に協力する」との声明を出した。また、声明では現段階では会社ぐるみの不正行為とはみられていない、としている。
監視委は同日、あすかアセットマネジメントを2010年の日本板硝子の増資前に同社株を違法に空売りしたとして金融庁に処分勧告を行った。JPモルガンはこの増資の幹事会社2社の1社だった。
同監視委は公募増資にからむインサイダー取引が広範に行われていた疑惑について調査を広げている。この調査は、複数の優良会社が、大幅に株式が希薄化される大規模増資の発表前に激しい空売りを浴びせられたことに端を発したもので、少なくとも3社の増資が対象になっている。
また、他の事情筋によると、日本最大手の野村証券も、機関投資家に同社が幹事会社として増資を手掛けた会社の情報を漏えいした疑いのある2つの事案について調査の対象となっている。野村証券も同日声明を発表、この件に関する自主調査を拡大したことを明らかにするとともに、規制当局が4月に調査を開始したことを公表して以来初めて「社外の弁護士団がこの件を広範に調査している」ことを明らかにした。
JPモルガンも、他の多くの外国金融機関同様、国内金融機関が圧倒する日本の金融サービス市場で思うように業務拡大が進んでいない。調査会社のディーロジックによると、今年3月までの1年間でJPモルガンのシェアはわずか4.4%で6件の新株発行の幹事業務を受託、その発行総額は約537億円となっている。この分野では上位5社は日本の金融機関でそのシェアは75%に達している。
今回の件でJPモルガンが最終的に違法行為を行ったと認定されたとしても、実際に罰則を科されるか、またそうなったとしてもどの程度厳しいものになるかは分からない。
この日、あすかアセットマネジメントが受けた課徴金は13万円にとどまる。同社はインサイダー取引で6050万円の利益を得ている。インサイダー取引でこれまで幹事会社が罰せられたことはない。
監視委はまた、みずほフィナンシャル・グループ株の増資にからむインサイダー取引で住友三井信託銀行に8万円の課徴金を科した。同行は2カ月前にも国際石油開発帝石(INPEX)の増資の際のインサイダーで5万円の課徴金の支払いを命じられている。