北佐久郡軽井沢町の1人の住民が、東日本大震災被災地の複数自治体と日本赤十字社に「ふるさと納税」として計約7億円を寄付していたことが28日、分かった。ふるさと納税をすると、住民税が控除される。この住民は、さらに株式譲渡による所得で県民税約1億円が源泉徴収された結果、住民税(県民税と町民税)の還付金として町から7900万円余が支払われることも判明。一方でこれらの経緯の中で、町が還付するためには、県から「県民税徴収取扱費」を受けても約4700万円分を持ち出しで負担する必要が出たことも明らかになった。
総務省によると、還付金をめぐるこうした事態は極めてまれ。町は28日、財政調整基金から約4700万円を繰り入れるなどの一般会計補正予算案を提出、全回一致で可決された。町は、本年度の課税額を決定する6月15日に還付する予定。藤巻進町長は「現在の地方税法上、(還付は)致し方ない」としている。
町などによると、株式譲渡による所得は、7%が国への所得税、3%が県民税として源泉徴収される。所得と納税額に応じ、住民税の控除、還付がある。町によると、寄付金による控除額はふるさと納税による上乗せ分を含め約8000万円。その結果、この町民が納めるべき住民税額はわずかに。そこに株式譲渡益での県民税納税で多額な控除が重なったため、還付金の支払いが発生した。
県民税として納められたうちの約6割は、軽井沢町を含む県内77市町村に交付金として配分。昨年度末までに交付が済んでいる。交付金の配分は、各市町村が市町村民税と併せて徴収している県民税の額に基づいて計算するため、軽井沢は約100万円だった。
臨時議会で藤巻町長は、総務省にも相談に出向いたことを報告した上で、還付金に伴う持ち出し分については今後、県を通じて特別交付税の要求をする考えを示した。
議員からは、「県関連の国会議員にも働き掛け、制度の見直しを求めるべきだ」「もらっていないものをどうして町が還付するのか分からない」「76市町村から町に返してもらえるような方法はないか」といった発言が出た。
総務省市町村税課は「ここまで多額な還付は極めてまれで、想定していなかったケースだが、制度の見直しは簡単ではない」としている。