中東の国、シリアでいま起きていることは、村上春樹の「1Q84」ではなくジョージ・オーウェルの「1984」である。
この国では、野党とは翼賛政党のことであり、翼賛政党が参加する選挙のことを「複数政党制による議会選」と呼ぶ。独裁体制を維持するための憲法改正は「改革の進展」である。何も決められないどこかの国の国会と違い、憲法改正も新法も対応は素早い。アサド大統領は父の死後、34歳で就任した。憲法規定上は40歳以上だったが、議会は直ちに「改革」したのだ。
自由を求めてデモをする人たちは「テロリスト」と呼ばれる。反体制派の拠点都市中部ホムスの街並みは無彩色で、「ゲルニカ」のような惨状だった。政府軍と自由シリア軍の交戦が続くなか、国連の「停戦」監視要員が巡回していた。停戦は、まだ一度も成立していない。(石合力)