今月27日に起きた麗水世界博覧会(麗水エキスポ)でのパビリオンの予約制中止騒動(来場客が殺到し、パビリオンに入場できない客が激しく抗議したため、事前予約制による入場を急きょ先着順入場に変更)をめぐっては「とりあえず駄々をこねれば何とかなる」という、韓国社会に根付いている誤った認識が露呈した現象だとの指摘が相次いでいる。延世大社会学科のリュ・ソクチュン教授は「補償を受けたいという心理の強い少数集団の利己主義と、責任意識の薄い指導層が妥協することが、韓国の先進化においていかに大きな足かせになるかを示す、端的な現象」と指摘した。
新京義線の開業遅延も同様のケースだ。韓国鉄道施設公団によると、今年末に開通予定だった新京義線は、2年先送りされた。その最大の理由は、新京義線の主要駅となる「孝昌駅」の建設が、駅舎建設予定地に居住する29世帯の住民の反対により遅れているからだ。公団側は住民が反対している理由について、補償金の問題だとみている。わずか29世帯の反対によって鉄道建設が遅れ、駅舎建設に待ったが掛かっているというわけだ。
昨年12月にはソウル市蘆原区の下渓駅で、中渓駅方面に向かっていた地下鉄7号線が、乗客1人の抗議によって停止した。ある乗客が、車内の非常電話で「(前の駅で)出口が開かず降りられなかった。責任を取れ」と声を荒げて抗議したからだ。困惑した機関士は電車を逆走させた。調査の結果、下渓駅で電車の乗降口は正常に開閉していたことが確認された。乗客1人の非常識な行動によって、数百人もの乗客の命を預かっている機関士は、電車を逆走させてしまったのだ。
ホテル、地下鉄に続き、飛行機を占拠して騒動を起こしたケースもある。2010年10月には、ベトナム・ホーチミン発の旅客機に乗っていた乗客2人が、到着が2時間遅れたことに腹を立て、ほかの乗客約30人を扇動して2時間にわたり空港の入国ロビーを占拠して立てこもった。後にこの乗客2人は警察に立件された。
少数派の頑固な反対運動や訴訟の前には、大規模な国策事業もなすすべがない。トンネル工事によってチョウセンサンショウウオの生息地が奪われるとして、市民団体による訴訟にまで発展した「千聖山サンショウウオ訴訟」は、その代表的なケースだ。一部の市民団体が「サンショウウオを救え」と主張したためにトンネル工事が何度も遅延し、2兆5000億ウォン(現在のレートで約1700億円、以下同じ)=大韓商工会議所の推計=もの莫大(ばくだい)な経済的損失が発生した。