特集ワイド:「放射能検査済み」実態はごくごく一部
毎日新聞 2012年05月28日 東京夕刊
放射性物質に関しての食の安全を100%に近づけようとするなら、細やかな検査が望ましいのは言うまでもない。大手スーパーの中には、独自ブランドの牛肉について全頭検査を実施したうえで、国より厳しい独自基準を設け、検出限界以下のものしか店頭に出さないという方針を取っているところもある。
コメに含まれる放射性セシウムを袋ごと高速で測定する検査装置も登場した。開発した島津製作所によると、30キロ入りのコメ袋を1分間で平均5個測定できる。福島県内での実証実験を経て、今月22日に発売された。価格は2000万円で、コメ生産者やJAなどへの販売を見込む。
この高速測定は医療用技術の応用で可能になった。果実や土壌も測定できるよう研究を進めているが、野菜や水産物など、コメと違って密度や大きさがまちまちのものへの応用は難しいのが現実だ。
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食品の安全問題に長く取り組んできた「食政策センター・ビジョン21」主宰の安田節子さんは「基準を作っても、担保するシステムがなければ意味がない。100ベクレルという数値の是非は別にしても、その基準を超える食品は市場に出回らない態勢を作るよう、国は取り組みをさらに強化すべきです」と強調する。