特集ワイド:「放射能検査済み」実態はごくごく一部
毎日新聞 2012年05月28日 東京夕刊
さすがにこれは心もとないのではないか。より迅速な結果を得るため、独自の取り組みを始めた自治体は多い。千葉県では、県内一の漁港、銚子市にある県の出先機関・水産総合研究センター銚子分室に簡易測定器を設置、昨年10月からその日のうちに測定結果を得る態勢を整えた。
同県によると、国の事業による検査は昨年度、県全体で週に10検体程度。現場の漁業者、卸業者らからは「もっと多く測定してほしい」というもっともな声が上がっていたという。「新基準のもと、茨城県で100ベクレルを超えて出荷制限となるケースも出てきた。隣接県として、こうした魚種を優先的に測定し、操業でも迅速に対応できるようにした」と同県水産課は説明する。
国の検査に使われる検出器が1ベクレル前後の検出限界(検出できる最低値)を持つのに対し、県の簡易検査は20ベクレル程度。精度は劣るが結果がすぐわかるメリットは大きく、4月以降、週平均15検体を測定している。
スピード以外の課題もある。新基準で態勢が強化されても、国の精密測定を受ける同県の水産物は週約20検体。膨大な漁獲量のごく一部に過ぎず、水産庁も「基準値を超えた魚の流通を100%防ぐことは現実には不可能だ」と認める。