プリウス、世界3大モデルへ躍進-ニッチ向け変わり種から
5月29日(ブルームバーグ):15年前の発売時にはニッチ市場向けの変わり種だったトヨタ自動車の「プリウス」は、1-3月に世界販売第3位に躍り出た。米国市場での需要や日本の環境対応車購入支援策などでハイブリッド車の人気が高まったためだ。
プリウスシリーズは1-3月の世界販売が24万7230台と前年同期の2倍以上に拡大、トヨタの「カローラ」の30万800台、米フォード・モーターのコンパクトカー「フォーカス」の27万7000台に次ぐ3位となった。
トヨタは、この2年間に大量リコール問題や東日本大震災後の生産調整に直面したが、プリウスの躍進もあって1-3月の世界販売で首位に返り咲いた。今年の米国市場で10位までに中型セダン「カムリ」を含めトヨタの3モデルが入っている。トヨタは08年から10年まで年間世界販売で首位だったが、11年は4半期ベースでもトップを取れなかった。
トヨタの躍進は「プリウスがまぐれ当たりだったのではなく、ハイブリッド車に長期間にわたる市場があること証明している」と、自動車業界コンサルティング会社、米カー・ラブのエリック・ノーブル社長は指摘する。
ダイハツ工業と日野自動車を含むトヨタグループが、米当局に5月届け出た1-3月の販売は、前年同期比18%増の249万台。ブルームバーグデータによると、GMは228万台、VWは216万台だった。
エコカー購入支援策日本政府が昨年末、エコカー販売を促進し始めたこともプラス材料になっている。購入者には10万円のエコカー補助金が総額3000億円の予算から支出され、プリウスハッチバック、ワゴン、プラグインのほか、米国では「プリウスC」として販売している小型ハイブリッド車「アクア」も対象になっている。このほか取得時の減税があり、プリウスでは約12万円が免除される。
アクアを含めたプリウスシリーズは1-3月に前年同期の3倍となる17万5080台を売り上げた。
アクアの投入とエコカー補助金の導入がほとんど同時期だったのは良かったと、BNPパリバ証券の杉本浩一アナリストは指摘する。トヨタはいい車を投入してきており、エコカー補助金の終了後も一定規模の販売を維持していくだろうとみている。
トヨタの豊田章男社長はいくつかの試練を経て、危機を脱しつつあるとコメントした。トヨタは最大市場の米国で10年、アクセルペダルがフロアマットに引っ掛かって急発進する恐れがあるとして、歴史的な大量リコールに踏み切った。
トヨタがカムバックしてきたことは明らかだと、S&PキャピタルIQのアナリスト、エフライム・レビー氏は指摘した。日本で1997年にプリウスを投入して以来、トヨタは世界で累計400万台のハイブリッド車を売り上げたと発表。これには米国での150万台も含んでいる。
日産自動車の電気自動車「リーフ」やGMの「シボレー・ボルト」を含むエコカーの中で、プリウスは成功モデルをつくり上げた。
独走状態プリウスの販売ペースに他のハイブリッド車がすぐに追いつくことはないだろうと、ボストンの自動車アナリスト、ジョン・ウォルコノウィッツ氏は述べた。米クライスラーとミニバンでみてきた現象で、初めてミニバンを投入して以降、クライスラーは依然としてミニバン販売でリーダーだとウォルコノウィッツ氏は語った。そして、プリウスはハイブリッド分野で最初のモデルだと付け加えた。
ナンバーワンであることは宣伝のために重要だとウォルコノウィッツ氏は指摘する。態度を決めかねている消費者に、なぜ買うのかという理由を提供してくれるからだと述べた。
米国市場のベストセラー車は過去30年、フォードのFシリーズのピックアップトラックだった。乗用車では、トヨタのカムリがここ10年のトップ販売モデルだ。
トヨタがプリウスを独特の形状にしたことは、自動車の愛好家には嫌う人もいるが、長期的に良かったとウォルコノウィッツ氏は話した。自動車を知らない高齢の女性ですら、プリウスとは何か知っていると語った。
まずプリウスありきプリウスの魅力は低燃費車として事実上のブランドになったことだと、コンサルティング会社のノーブル社長は話した。プリウスはまずプリウスありきで、トヨタがどうかは二の次だと指摘する。
一方、米国ではガソリン価格が5月22日に1ガロン当たり平均3.68ドルで、4月5日に比べ6.6セント下がった。ガソリン価格の下落が続くのはハイブリッド車の販売に好ましくないとウォルコノウィッツ氏は述べた。
米国でガソリン価格が下がり、ハイブリッド車の販売が落ちるだろうとウォルコノウィッツ氏は指摘した。米国でハイブリッド車の販売が本格化するのは、ガソリン価格が5ドルに定着してからだろうと話した。
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更新日時: 2012/05/29 11:51 JST