特集ワイド:「放射能検査済み」実態はごくごく一部

毎日新聞 2012年05月28日 東京夕刊

環境からの放射線を遮断するため鉛でできた装置。この中に測定用の器を収納する
環境からの放射線を遮断するため鉛でできた装置。この中に測定用の器を収納する

 現在、国の方針に基づく食品の放射能検査の対象となっているのは、過去に出荷制限指示の対象となった自治体とその隣接自治体。1都16県にのぼり、検査の実施主体もこれらの自治体だ。検査対象は、これまでに50ベクレルを超える放射性セシウムが検出された農水産物など。原則、週1回程度の実施が求められている。

 実際の運用を水産物を例に見てみよう。水産庁によると基準超えと判定されたのは昨年3月24日から今年3月31日までに254件。これに対し新基準となった4月1日からはすでに288件(5月25日現在)に上る。

 同庁の説明では、漁港で水揚げされた魚から検体が採取され、検査事業の窓口「海洋生物環境研究所」(千葉県御宿町)に送られる。そこからさらに実際の測定を行う機関に回され、結果が出るのはおおむねその2日後。つまり水揚げからは3日後となり、通常、同じ漁で取れた魚はその間に流通してしまっている。

 もし基準を超える魚が流通したことが事後にわかった場合はどうするのか。同庁漁場資源課は「これまでそうしたケースはないが、そういう事態となれば、その段階でできるだけ回収する」と説明する。

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