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変ドラ第二回 「大男がでたぞ」 てんとう虫版ドラえもん12巻より
あらすじとしてはこれまた定番で、「ジャイアンにいじめられたのび太が、ドラえもんの道具で復讐する話」。 この話はジャイアンがメインと言ってよく、全編全開にヒートしていて読者の柔い読みを粉々にするほど笑わせる。 初っぱなお約束の暴力描写で始まるが、さすがメインだけあっていきなりコレ。 ↑一切の同情や感情移入を断固拒否する豪快なマウントポジション。 大泣きの空中浮遊で(お約束だが、一番高い浮遊は「かえってきたドラえもん」だろう)戻ってきたのび太は、庭草に水を上げるママのじょうろを奪って自分にぶっかける。 「身体が大きい」=「強い」 と言う子供世界の不文律を泣きながら訴えるのび太には、大抵の人間は子供時代を思い出して同情する。 「水なんかかけたってだめだよ。」 こんな冷徹な正論をそれはもう冷ややかな表情で言い放つ。 それでも道具の使い道を思いつくや、嬉々として(ベロだし)「からだポンプ」 をポケットから取り出す。後述するが、絶対に自分が面白いと思ったから出したに違いなく、失敗したらのび太がいけないんだぐらいの了見で協力しているふしがある。まあ、いいけど。 しかし、さすがというかやはりというか、F氏はそれを上回るほどにジャイアンを憎々しげに描く。 だが、これはいかがなものか。 ↑「さからうものは死けい!」「アハハ。いい気持ちだ。」ホントに噛めば噛むほど。見れば見るほど笑いが止めどなくこみ上げるコマだ。
「ばかめ、足あとをのこしていった。これをつけて行けば・・・」 と、これだけの台詞を次のコマの一瞬で分かるほど巨大な足跡を目の前にして言い切る。 ここからのジャイアンのハチャメチャぶりは、よく見ようが見まいが爆笑必至。 例えばコレ ← ← ↑3コマ目の急変ぶりというか、キョトンぶりというか、もっともぶりというか、シロクロぶりというか、とにかく「いるわけないや。」と言う台詞共々気付いてしまうと戻れない種類の面白さに満ちている。繰り返し読むと「そういえば・・・・。」の「・・・・」も高ポイント。 これだけならまだしも、一コマしかおかず、その真下のコマでこの始末。 ↑もうおわかりだろうが、このコマでの爆笑ポイントはズバリ「のび太」だ。高らかに歌う急変ジャイアンも、その歌詞も(もの凄い歌詞だ)、音符も、闊歩する絵も、全部何気なく手紙を持って近づくのび太の面白さを盛り上げるツマに過ぎない。あの口ときたらもう・・・ しかも畳みかけるようにして手紙の文面がコレ ↑ここまで来ると説明すら無意味に思えるが、ひらがなのみで構成されたこの手紙は、もう全てのセンテンスがよく見ると爆笑。中でも注目すべき点は「そうだから」「やっつけて」ずれて「やる」。そしてとどめがひらがなで「おおおとこ」! 「お」が三つも! もう充分過ぎるが、これでまだ半分。 「こんにちは。」 しかもコンコンとノック! びびりながら階段を上るジャイアン(逃げればいいのに)の台詞がまたキてて、 「二階におきゃくなんておかしいなあ。」 読者の誰もが「おおおとこ」だと分かっている場合、普通登場人物はもうちょっとその先を行く物なのに、ジャイアンは何とその下を行く荒技。「おかしいなあ」もおかしいし、「二階に」ってのもバカ過ぎる。 で、ページをめくるや間髪入れずコレ ↑巨大すぎる。窓も両開きの大窓で、しかもカーテンが両側にあるほどでかいのに、それいっぱいの手。しかももう家のベランダ、しかも二階に来てるのに、指さして「ここかね。」は凄い。おおおとこ過ぎる! 「おおおとこ」と言うタダそれだけのネタで、こうも頂上近くまで極まっているとホントにシンプル・イズ・ベストと言うか、ギャグまんがの王道というか。思いついても描かないというか描いても普通つまらないと思うんですよね、こんなネタ。 で、上だけでも充分笑えるのに、切り返して更に笑わせるのがコレ ↑手が開いている点なんかも含めてパースペクティブギャグ(?)の頂点だが、でかすぎます。ホントに恨みも何もない仏のような笑みののび太も自乗して笑えます。ポンプ握ってますからね。何気なく。タケコプターを頭に付けたままのドラも猛烈に可笑しいです。 で、先にも書いたように、ここでのドラは邪悪すぎます。心底楽しんでます。自分の道具選択のセンスにただ自画自賛的と言うか。まあ、そのねらいは充分あがっているわけですが、後期ドラには見られない「のび太と一緒か、それ以上に無茶する」キャラが残っていて安心できます。絶対にタダの愉快犯ですからねコレ。仏面ののび太も含めて、完全に復讐そっちのけでタダタダ楽しんでいる二人がとにかく面白くて共感できます。 それを自覚したのかどうか、ジャイアンが疑心暗鬼になって母ちゃんにしかられそうになるのを暗示させる部分では、反省気味というか、「やりすぎたかな」って雰囲気でその場を去ります。ポンプ片手に。 ↑台詞だけですが、やはり「大男」が締めてくれます。ピシって。かあちゃんだって言ってるのに・・・。 万事復讐が終わったりしたときは、ギャグまんがの宿命なのか、わざわざちゃんとオチを用意しているのもF氏の素晴らしいところです。「てにとり望遠鏡」でも「拳銃王コンテスト」でも、のび太はちゃんと失敗して終わらなければ行けないと言うカルマに縛られてます。
でもやっぱりデカすぎ。 ↑発禁ギリギリのネタ。ここでも手に持ったポンプが何とも・・・
何というか、電車の中であまりにも面白かったのできゅうきょ取り上げた話でしたが、改めてF氏の凄さというか面白さを痛感しましたね。全然よく見なくても面白いんですよねコレ。絵だけで面白いまんがの基本中の基本が圧倒的パワーをもって笑わせる良作です。 ところが12巻は思い入れが強いのかよく読んでいたのか、読み直すとどの話も爆笑モンでした。続けて12巻をやってみたいと思います。(これは、ずっと後で「12巻すべて見せます!」という無謀企画を生むわけです) ではでは。 |