生活保護制度めぐりさまざまな問題 「マニュアルDVD」も
生活保護制度をめぐって、さまざまな問題が浮上している。
母親の生活保護費の受給を認め、深々と頭を下げたお笑いコンビ「次長課長」の河本準一さん(37)。
そして、河本さんの母親(65)は「わたしがしっかり話をしなさいと。あの子は決して、悪いことはしていないですから」とFNNの取材に対して答えた。
河本さんは「不正受給ではないが、甘い考えだった」と謝罪し、「これまで受け取った生活保護費を返納する」とした。
河本さんは「今になると、むちゃくちゃ甘い考えだったのではないかと、深く反省しています」と語った。
この問題は国会にも波及した。
自民党の片山 さつき参院議員は「大変な反響がきているんです。これでは、まじめに働いて、税金を納める気はしないと」と述べた。
さらに、小宮山厚労相は「これは、生活保護制度に対する信頼を失うことにもなる」と述べた。
一方、「ナマポ」と呼ばれる、生活保護の略称。
インターネットの掲示板では、「ナマポ生活最高」、「ナマポでパチンコして何が悪いんだ」などといった書き込みが飛び交っている。
今、働けるのに働かない若者などが、生活保護費を受給する事例が相次いでいる。
生活保護制度は、戦後まもない1950年に始まった。
当初、受給者は205万人いたが、1995年には88万人にまで減少した。
しかし、その後、急増し、現在はおよそ210万人と、過去最高の受給者数になっている。
東京23区で最も受給者が多いのは足立区。
足立区の担当者は「今は(月に)60世帯ずつ増えている状況です。具体的に言いますと、働けるが、働く場所がない。それで、働いて得る収入の糧がない。そこの世帯の数が増えている」と語った。
支給額は個人によって違うが、生活費や家賃の補助などが受けられるほか、医療費が無料になるなど、2012年度の給付総額は3兆7,000億円にも。
こうした中、生活保護の受け方DVDが販売されている。
このDVD「それゆけ! ニート大作戦 正しい生活保護の受け方」のケースを開けると、ひと目でわかる生活保護必要度チェックシートや、生活保護の申請書まで入っている。
内容は、仕事を辞め、無職になった主人公の前に現れたメイド姿の女性。
そして、生活保護の受け方を細かく説明してくれる。
このDVDの最後には、「不正受給を促すものではありません」と表示される。
DVDを販売製造した会社は「若者の生活保護や不適切な受給を助長するつもりはなかった。中に入っていた生活保護申請書はただの付録で、会社の話題作りになればいいと思った」と答えた。
生活保護の実態にくわしい長崎大学経済学部の林 徹教授は、現状の制度の問題点について、「生活保護自体は、なくすべきではないと思いますが、自治体に調査権を与えるのは、一方で必要だと思います」と語った。
林教授は、申請者の財産状況など、各自治体が行う調査に強制力がないことを問題視している。
しかし、一方で支給するための基準を厳しくすることについては懸念も示した。
林教授は「本来なら、保護申請して、支給されるはずの人たちが、『どうせ駄目だろ』と、尻すぼみする可能性が、1つの懸念」と語った。
厚労省によると、2007年の時点で生活保護の受給の対象にあたるのは、全国で337万世帯あるという。
しかし、実際に受給している世帯はこのうちの3割だという。