若齢女性による経口避妊薬、高齢女性によるホルモン療法の使用が炎症性腸疾患(IBD)と関係する可能性が、新しい研究で示され、米サンディエゴで開催された米国消化器病週間(DDW2012)で発表された。
米マサチューセッツ総合病院(ボストン)のHamed Khalili博士らの研究で、経口避妊薬はクローン病(Crohn's disease)の高リスクと、また一部の女性が閉経後に受けるホルモン補充療法は潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)と関係していることが明らかになった。このうち経口避妊薬とクローン病において最も大きな患者での関連性が示され、経口避妊薬を5年以上使用すると、クローン病リスクは3倍になるという。
Khalili氏らは大規模な米国看護師健康研究(NHS)IおよびIIに登録された若齢女性約23万3,000人を対象に、最初の研究がスタートした1976年から2008年までのデータを検討。その結果、クローン病309例、潰瘍性大腸炎362例が認められた。避妊薬を全く使用しなかった女性と比較したところ、現在避妊薬を使用している女性ではクローン病リスクはほぼ3倍であった。潰瘍性大腸炎については、非使用群に比べてリスクは増大していなかった。
2つ目の研究では、1976年にスタートしたNHSに登録されていた閉経後女性10万9,000人近くのデータを検討。同氏らが2008年に追跡調査を行った結果、クローン病138例、潰瘍性大腸炎138例が認められ、ホルモン療法群の潰瘍性大腸炎リスクは非ホルモン療法群の1.7倍であった。クローン病では関係はみられなかった。両研究は、ホルモンを用いた治療と消化管障害の関連性を示しているが、因果関係は証明されていない。
Khalili氏は「これらの明白な関連性について、現時点では機序は明らかではない。動物研究では、エストロゲン投与により、大腸が炎症にさらされやすいことが明らかにされている」と述べている。同氏は「IBDの強い家族歴があり、経口避妊薬を使用している女性は、関連性が示された今回の研究結果について認識する必要がある」と述べている。両研究の共著者の1人は、ファイザー社、ミレニアム・ファーマシューティカルズ社、バイエルAG社の顧問を勤めていることを開示している。
別の専門家は、「この関係はおそらく若齢女性でより懸念される。高齢女性ではリスクがあるものの、ごくわずかなようである。経口避妊薬を使用している若年女性でのクローン病との関係(リスク増大)のほうが強いと思われる」と述べている。今回の研究は学会発表であるため、データおよび結論は、ピアレビューを受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなす必要がある。(HealthDay News 5月21日)
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