【東京】東京電力は、福島第1原発の原子炉4号機について、昨年3月の東日本大震災後初めてとなる詳細な実地調査を終えた。同原発が再度大地震に襲われた場合、建屋が崩壊し、放射性物質がさらに拡散する恐れがあるとの懸念を和らげるのが狙いだ。
原発4号機には建屋の上部に燃料プールがあって、多数の使用済み核燃料棒が格納されており、極めて危険とみられている。東電は、最近の実地検査の結果、建屋の構造が安定しているとのこれまでのコンピューター分析が裏付けられたと述べた。
細野豪志原発事故担当相は26日に4号機を訪れ、東電の出した結論に満足していると述べた。
専門家は4号機の使用済み燃料プールが懸念要因だと指摘している。4号機のプールに1000本以上の燃料棒全てが納められているからだ。4号機は大震災の時に定期検査中で、全ての燃料棒がプールに納められていた。大地震と津波は一連の原子炉のメルトダウン(炉心溶融)と爆発を引き起こした。それにより、4号機の屋上は吹き飛び、壁の一部が損傷した。
東電は4号機の建屋について、3月11日の東日本大震災と同程度の強さの地震が来ても耐えられる能力があると述べた。同社の広報担当、松本純一原子力・立地本部長代理が記者会見で明らかにしたところによると、プール周辺には大きなひびや金属腐食が見つからなかった。コンクリートの壁をたたくなどして検査を行い、強度を確認したという。
松本本部長代理は、外壁に爆発によって生じたとみられる小さなたわみが見つかったと述べながらも、非常に小さく、この壁の場所が燃料プールから離れているため、危険ではないと付け加えた。東電は念のため、新たなデータを使って再度計算を行う。
松本本部長代理は「当社の計測の結果は(建屋の)強さを裏付けた」と述べた。東電は既にコンクリートと鉄製の支柱で既に燃料プールの底部の補強を行っていたが、構造上の安全を懸念する声が多く聞かれたことを受けて、検査を最近実施したという。
しかし、原発の安全性を懸念する活動家や観測筋、例えば村田光平元スイス大使や米国のロン・ワイデン上院議員などは、再度大地震に襲われた場合、4号機の燃料プールが崩壊するか水漏れを起こす恐れがあると警告し続けている。その場合は多数の燃料棒がむき出しになって過熱し、大量の放射性物質が放出される恐れがあるという。
最悪の場合、これらの燃料棒から放出される放射性物質によって作業員が同原発からの撤退を余儀なくされ、東電が炉心冷却のために行った応急的な措置システムも崩壊するという指摘もある。
このような懸念は、たとえ一連の情報公開が実施されていても、福島第1原発の状況がいかに不明なままか、そして日本の原子力業界への不信がいかに根強いかを浮き彫りにしている。
第1、第2、第3の各原子炉は損傷が激しく、放射性物質が余りに多いため、人々が接近できず、東電はコンピューターシミュレーションや遠隔測定を余儀なくされている。
多くの原子力専門家は、4号機でさらなる問題が発生した場合、何が起こるのかを予測するのは不可能に近いと述べている。燃料棒が損傷しない状態をそのまま維持できるか、あるいは防御カバーがはがれてしまうか、がれきに埋まってしまって冷却が困難になるかなどによって結果が違ってくるからだ。
東電は、燃料プールが破壊ないし損傷されるような事故が発生する確率を分析していないとしながらも、対策は講じたと述べている。東電は、燃料棒が1年以上冷却されているため、たとえ水の循環システムが止まったとしても、燃料棒が過熱して水が蒸発し、放射性物質の拡散が始まるまでには3週間かかると推測している。
松本本部長代理は、燃料プールから水漏れが発生した場合に備え、東電は燃料棒の上から水を噴射するためのトラックを準備していると述べた。また最終手段として、コンクリートのような混合物を上から噴射し、燃料棒を密封する用意もあると語った。
また松本本部長代理は、国民の不安軽減のため、4号機の健全性に関する評価を独立機関に要請することを検討すると述べた。
しかし、プール崩壊の確率はほとんどないと考える人でさえ、燃料棒は出来るだけ早急により安全な場所に移すべきだと述べている。