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──アップルとフォックスコン(Foxconn)の関係などがメディアで話題になる際、その労働環境がとかく注視されがちです。中国の製造業のインサイダーであるミドラーさんから見て、中国の労働環境にまつわる欧米の報道にはどのような感想をおもちでしょうか?

ミドラー:わたしが訪ねたことのある工場のなかにはひどい環境のところもありました。椅子も机もないなかで、床に座った状態で工員たちは重労働を強いられていました。彼らが危険な化学薬品に手を浸けねばならない工程に従事していたり、有害なガスの中で長時間にわたって作業するようなこともあったかもしれません。フォックスコンについて言えば、報道を見る限りにおいては、まったく悪くなさそうに見えますね。照明がついたクリーンな環境です。問題があるとすれば、フォックスコンが儲かっている会社だということです。自殺した工員の家族は、会社から多額の慰謝料を得ました。そしてこのことが相次ぐ自殺者を招いたのです。フォックスコンが以後慰謝料を払わないと発表したのはそのためです。

中国における労働環境について欧米のメディアが犯す最大の過ちは、工場で起こっていることを彼ら自身の基準に基づいて見てしまうことです。工員が6人1部屋で暮らしているのを見て、さも犯罪的なことのように感じるかもしれませんが、まず工員たちにそのことが苦痛かどうかを聞いてみるべきなのです。実際、彼らの与えられている空間は、潜水艦の乗組員よりも狭いわけではないし、そんなことを言うなら潜水艦の乗組員は1月も陸を見ることなくそんな部屋に監禁されていることになります。ロシアから来たある医学生が、中国の学生が部屋をシェアしているのを見て気の毒だと言ったことがあります。彼の学校ではすべての医学生には個室が与えられるというのです。

なんにせよビジネスをやるうえで中国が有利なのは、工員たちが決して快適でない環境でも働くことを厭わない点にあります。中国人はことさら不平不満を言う人たちではありません。ただし、そうすることで自分が得をするなら別ですが……。

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