中国ビジネスが悪夢になるとき。注目のビジネスルポ『だまされて。』の著者ポール・ミドラーに訊く

中国製造業の実態と、その悪夢の構図を描いた初著書『だまされて。』で、『エコノミスト』『フォーブス』などが絶賛。現在は、貴重な中国ウォッチャー/インサイダーとしても欧米メディアで注目を集める中国在住の独立エージェント、ポール・ミドラーに、これからの中国ビジネスのあり方を訊いた。

1 2 3 4 5

『だまされて。ー涙のメイド・イン・チャイナ』
ポール・ミドラー=著 サチコ・スミス=訳〈東洋経済新報社〉
中国人経営者の巧妙なやり口や、中国製造業の実態とその膠着の構図を描いた一冊。


ポール・ミドラーの初めての著作『だまされて。』は、中国のマニファクチャリングの実態を描いた貴重なリポートだ。仕様書にない仕様変更なんて日常茶飯事、原材料のちょろまかし、製品管理データの隠匿、発注するたび吹っかけられる値上げ交渉、勝手に行なわれる新工場の建設、恫喝、泣き落とし、カラオケ接待……欧米企業と中国企業を取りもつエージェントとして、現場を実地で見てきた著者が明かす中国人経営者たちの手練手管は、欧米の辣腕ビジネスマンをナイーヴな新入社員のように弄ぶ。「中国進出」という甘いささやきに乗せられてやってきたものの、そこで出合う不条理はさながらカフカの小説。欧米企業の悪戦苦闘を通じて、「世界の工場」中国のビジネス事情と問題点を暴き、欧米において「中国離れ」を加速させたとも言われる本書の著者に、読みどころ、そして中国との付き合い方の秘訣を訊いた。


──中国の製造業者の手口の数々と、それが引き起こすさまざまな問題が本書の主題とはなっていますが、後半には、発注元でであるアメリカ企業側の問題や、それに対するミドラーさん自身の苛立ちも色濃く表明されています。つまり、中国において起こっている問題は、中国のみの問題だけでなく、進出する企業の側にも問題もあることが明らかにされているわけですが、そもそも、この本を書くにいたったモチヴェーションはどこにあったのでしょう?

ミドラー:中国の製造業にかかわる仕事をしてきていくつか印象に残る出来事がありました。外国のさまざまなクライアントと中国の工場とを取りもつ仕事を何年もしてきましたが、気づくとこの間ずっと、繰り返し同じ内容をクライアントに警告し続けてきたことに気づいたのです。いざ、それを書き始めてみると、それが必ずしも中国でビジネスする人だけに当てはまるものではないことに気づきました。中国の工場で作られた製品は世界中で買われています。ですから世界中の消費者も、いったい中国の工場では何が起きているのかを知りたいのではないかと思ったのです。品質問題が表面化し大きく取りざたされる前に執筆を始めていましたが、そうした問題が報じられたこともあって、かえっていいタイミングだったと思います。中国製品における品質問題はいまだに多くの消費者を当惑させるテーマです。そこに少しでも光を投げかけられたらと思って書きました。

「ハネムーン」から始まるビジネス>>>

1 2 3 4 5

このテーマに関連した記事