パキスタン諜報機関がタリバン支援=アフガン政府顧問

2009年 10月 18日 10:33 JST
 
check

 [ロンドン 17日 ロイター] アフガニスタンのスパンタ外相の上級政策顧問であるダブード・モラディアン氏は、ロイターのインタビューに答え、同国で自爆テロなどの攻撃を繰り返す武装勢力に対し、隣国パキスタンの諜報機関である軍統合情報部(ISI)が支援を行っているとの見方を示した。

 英国際戦略研究所のセミナーでロンドンを訪れたモラディアン氏は、ISIによる武装勢力の支援について、核保有国であるパキスタンが不安定化するという懸念を西側諸国に与え、財政支援を得ようとするのが狙いだと語った。

 ISIの関与を示す確たる証拠はあるのかとの問いに、モラディアン氏は昨年7月にカブールで2人のインド人外交官を含む数十人が犠牲になったインド大使館での自爆攻撃を例示。パキスタンは当時、この事件を強く非難し、自国の関与を否定したが、モラディアン氏は、ISIの諜報員がかけた電話記録を証拠として挙げ、その情報を各国の情報機関にも提供したという。

 その一方で、モラディアン氏は「米英両国の情報機関は(ISIが関与したという情報に)同意したが、彼らは政策決定の立場にない。情報を上げた上官には、決定を下す気概がない。ISIのことになると、国際社会に勇気がなくなる」と嘆いた。

 パキスタンは、1980年代のアフガン侵攻でイスラム兵士を利用しソ連に対抗。その後はタリバン政権をサポートした。またインドは、パキスタンがカシミール地方でイスラム聖戦士グループを養成していると長年非難を続けている。

 <戦略的な目的>

 これに対してパキスタン政府は、いかなる場所でも武装勢力の攻撃を支援することはないと否定。実際、同国政府は自国内で活動するタリバンによる攻撃に直面している。この1週間で100人以上が死亡しており、軍は17日からアフガン国境に近い南ワジリスタ地区で武装勢力への攻撃を開始した。

 モラディアン氏は、ISIとアフガンのタリバンとの関係はかなり緊密で、「ISIはタリバンのパキスタン国内での活動について、完全に承知した上で関与している」と話す。

 ISIはタリバンの攻撃に単に目をつぶっているだけなのかという質問に、モラディアン氏は「違う。標的を選んだり、タリバン幹部に世論について伝えたりする際には戦略的な目的がある」と説明する。

 しかし、パキスタンではISIが安全保障政策を牛耳っていることから、同国の内務相や外相はアフガンでの攻撃に関与していないという。

 モラディアン氏がISIの関与を示す別の証拠として挙げたのは、アフガンに駐留する米軍と北大西洋条約機構(NATO)軍のトップ、マクリスタル司令官が、今年8月に作成した報告書でISIの役割を公にした点。同報告書には、アフガン国内の主要な反政府勢力の幹部が「パキスタンのISI内部から支援を受けているという情報」についても言及されている。

 また、モラディアン氏は、アフガンでのISIの関与がタリバンとアルカイダを含んだ「テロのトライアングル」の一部になっていると指摘。さらに、ISIの関与がアフガンで混乱が続く理由の一つになっているとも語る。このため、モラディアン氏は、パキスタン政府が軍とタリバンとの関係を断ち切らせるために取り組む必要があると訴えた。

写真

バンキア支援要請、想定の2倍

スペインが支援に乗り出した銀行バンキアは、190億ユーロの資本注入を政府に要請。政府想定の約2倍の規模となった。
  記事の全文 | 特集ページ 

 10月17日、アフガン政府の上級政策顧問ダブード・モラディアン氏は、同国の武装勢力をパキスタンの諜報機関が支援していると指摘。写真は8日、カブールで起きた自爆攻撃の現場(2009年 ロイター/Ahmad Masood)