■プライバシービジネスの世界覇権狙う米国
政治によるトップダウンの後に、民間事業者が業界ルールとベストプラクティスで呼応する――。米国では、こうした方法で規制を具体化し、産業構造を官民一体でデザインすることが多い。幅広い領域でとられている手法であり、今回のようなプライバシー関連ビジネスも同じアプローチに基づく(図2)。
官民一体でデザインするアプローチでは、事業者が何らかのアライアンス(提携・協力体制)を形成しやすくなる。プライバシーデータやビッグデータ利用に関する共同規制[注4]を設けることになり、それに準拠できない事業者を市場から排除しやすい。そのうえ、残った事業者は政治(つまり民意)のお墨付きを得ることとなり、正当性をうたって事業を進められる。
足並みをそろえることでデファクトスタンダードとして位置付けられやすくなるというメリットもある。これが世界に先んじれば、米国発の規制が、世界市場でデファクトスタンダードとしての影響力を持つことになる。
今後、米国内では権利章典に沿った規制強化が進む。既に民主・共和両党から、同分野に関する法案が数多く議会に提出されている。そして、米国連邦政府が制定した法制度となれば、新興国を含め、多くの国がそれを参照する可能性が高い。
事業者のアライアンスによる共同規制は、その枠組みごと海外に輸出され、米国外に波及していくかもしれない。既に金融やヘルスケアといった分野では、このような枠組みごとの海外輸出の実績がある。米国発の規制に粛々と対応を迫られるケースが出てきかねない事態となっている。
■アプリストアのプライバシー保護では主要6社が合意
米国では、今回の消費者プライバシー権利章典のほかにも、個人情報/プライバシー分野の施策が相次いで打ち出されている。一例が、ホワイトハウスが権利章典を発表する前日の2月22日に発表された、米カリフォルニア州の施策だ。
カリフォルニア州のカマラ・ハリス司法長官は、米国のモバイル関連主要企業6社と、モバイル・アプリストアにおけるプライバシー保護を強化することで合意したと発表した。この6社とは、米アップル、米グーグル、米アマゾン・ドット・コム、米ヒューレット・パッカード、米マイクロソフト、カナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)である。
[注4]政府が枠組みを設定したり、監視・罰則権限を保持したりすることによって、柔軟な自主規制のメリットを生かしつつ、確実に目的を達成していく政策手法のこと。
ホワイトハウス、プライバシー、ビッグデータ、消費者プライバシー権利章典、FTC、EU、ヒューレット・パッカード、マイクロソフト、グーグル、アップル、アマゾン・ドット・コム、リサーチ・イン・モーション
大統領名で打ち出した「消費者プライバシー権利章典」(A Consumer Privacy Bill of Rights)の草案は、プライバシービジネスの構造化を目指して…続き (5/25)
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