買い物に出掛けた帰り道、何時もは通らない裏道を進んでいた時に彼を見付けた。左腕がもげた状態でゴミと一緒に倒れ込んでいた彼をそのまま拾って持って帰る。直せばまだ使えるなと思ったのが半分、先程買ったばかりの機材や道具の試用目的が半分。左肩から綺麗に削げ落ちているその断面はコードと鉄骨が時折火花を散らしながらはみ出していた。
連れて帰ってきた彼を台の上に寝かせ服を脱がせてプラグの差し込み口にコードを繋いでいく。微動だにしないので電源ごと落ちているのかも知れない。中枢である頭部は特に損傷もないがかけていたサングラスはひび割れていた。作業に邪魔なので外すと真っ青な髪と同じ色の瞳が瞬きもせず天井を見上げていて、造形もまあ整っているので手が込んでいるなと思った。
右腕を参考に左腕を作り繋げて、緊急停止したらしい核プログラムを起動して、曇りガラスのようだった目の奥がぐるりと回ったのを確認し、全身のプラグを抜いた。半身を起こした彼は此方を向くが口は開かなかった。
「…あれ…電源はついたのに…」
「…」
「あ、もしかして音声機能はついてない?」
問い掛ければ彼は首を縦に動かしたので納得しつつ脱がせた服を渡す。横目で動向を見つつ道具を片付けていると立ち上がった彼が隣に並んできた。背は高い、そう作られたのだろうけども。
「何?」
「…、」
「…ああ…ゴミと一緒に捨てられてたから、僕が拾って直したんだよ」
「…」
「新調した機材も試したかったしね…動かしにくいところとかある?あったら直すから遠慮なく言ってね?」
首を横に振ってから尚も此方を見下ろしてくる姿に閉口する。何が言いたいのか解らないと流石に困る、ロボットだから表情もそう変わらないし余計だ。黙ったまま見つめ返すと彼はふっと視線をずらし、口を開いた。その中に指をいれ小さなチップを取り出すと彼はそれを此方へと差し出してくる。
「…、記憶チップ?」
頷いたのを確認してからそれをパソコンへと放り込み中身を再生した。シバ、そう呼ばれている。確かに彼の身体には48とロットが入っていた、語呂合わせでシバなのだろうか。何処かの研究施設のような所の映像が続いたあと、景色が変わり、燃え盛る火炎が映る。成程な。納得して動画を止めてから彼、シバを見上げた。蒼い両目は静かだった。
「シバくん、でいいのかな?」
「…」
「…戦闘用アンドロイドってことね…ごめんね、知らなかったから左腕、特に何の機能もつけなかったや」
「…」
「……、捨てられた?」
問い掛けると彼の唇が僅かに上を向く。そういうプログラムも入っているんだな、戦闘用にしては珍しい。
「そうだなあ…何でもいいって言うなら、働ける所紹介するよ?」
「…」
「あっその代わり定期的に検査に来てね。この辺りは僕の工場くらいしかロボット修理する所が無いし…」
「…、」
不意に彼の指が伸びてきて反射的に身を引くと、その指はゆっくりと髪の毛に触れた。何度か髪の隙間をなぞってから離れた指先には鉄屑が挟まっている。
「ついてた?」
「…」
「ありがと、優しいんだね」
何処か照れたような表情を見れば、ああこのロボットは兵器にしてはいけないロボットだったんじゃないのかなと、そう思った。