はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

Number PLUS 2009 プロレスに殉じた男 三沢光晴

2009-09-30 18:00:18 | 雑誌
Number PLUS 2009 October―Sports Graphic

文藝春秋

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「興行とスポーツの線引きなど不可能だ。プロレスは興行でもあるしスポーツでもある。エンターテイメントでありながらセメント(ガチンコ)でもあるしギミック(フェイク)でもある。つまりストイックなほどに曖昧で二面的なジャンルだ」

「Number PLUS 2009 October―Sports Graphic プロレスに殉じた男 三沢光晴」

 眩いライトの下で、巨人たちが舞う。タフネス、ストレングス、クイックネスと兼ね備えた男たちの一挙一動に、会場は揺れる。強面のレスラーが相手の技を受けきり、自らの技を返し、かぎりなくリアルなストーリーを形作る。リングの中には、ヒーロー幻想が顕在化していた。
 プロレスを好きになったのは、小学生の頃だった。スタン・ハンセンやブルーザー・ブロディら外国人軍団の迫力に圧倒された。ちょっと成長し、中学高校の時には三沢や川田らの抗争に熱くなった。さらに時が経ち、新日との団体の垣根を越えた戦争が起こった時も、僕はプロレスを見ていた。一番好きだったのは小橋だったけど、二番手は常に三沢だった。
 どこからでも逆転可能な必殺のエルボー。凶悪な相手の技をことごとく受け止め、幾度となく立ち上がる不死身ぶり。だからというか、彼が亡くなったことは、今でも自分の中で現実として受け止められないでいる。カウント2.9で肩を上げてくれるような、そんな気がしている。
 この雑誌を読んで、ようやくわかった。三沢の下積み時代。全日の看板選手時代。ノアの旗揚げ。選手として、経営者として彼がどれだけ愛されていたか。ファンのみならず周囲の人間にもどれだけの求心力があったか。彼を失った人たちは、今、何を思っているのか。彼の命を奪った人が、今、何を思っているのか。
 本当は、もっと早めにアップしようと思った。でもなかなか読み進められなかった。1ページ繰るのに恐ろしい時間がかかった。涙は、あとからあとから湧いてきた。僕の愛していたプロレスをする人は、あの日あのマットの上で死んだのだ……。

 よくできた構成の雑誌だ。往時の写真や遺影、三沢を取り巻く人々の意思ある表情がふんだんに載せられている。文章も、変に感情的になることなく、端正に丁寧に三沢のことを記している。プロレスファンのみならず、あの事件に興味を持ったすべての人に読んでいただきたい。
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裁判員の女神(2)

2009-09-28 19:53:15 | マンガ
裁判員の女神 2 (マンサンコミックス)
毛利 甚八
実業之日本社

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 ……事件以来、私は夜も眠れず仕事も出来ません。姉の無念を晴らさない以上、私が普通の生活を取り戻すこなどありえません……
 ……被告人を死刑にしていただくことを望みます……

「裁判員の女神(2)」作:毛利甚八 画:かわすみひろし

 最愛の姉を行きずりの男に強姦されたあげく殺された。恨み骨髄に達した妹は、法廷での復讐を誓う。求刑は、もちろん死刑。
 1人を殺しただけでは、それがたとえどんなに無慈悲かつ残忍な殺しかたであっても、情状酌量の余地のない身勝手で傲慢な反抗であったとしても、現在の日本の法律では死刑にできない。100%ではないが、かぎりなく0に等しい。
 裁判員制度導入を契機に断固たる刑罰を望む新聞記者や、どう見ても見た目がカタギじゃないテキ屋など、前巻のホームレスに負けず劣らずな個性的な裁判員たちは、無期ではなく極刑を望んで討論を進める。
 兄を殺された被害者という過去を持つ左陪席・勇樹美知子は、しかし自らの心の傷にもめげず、公正に公平に、加害者も被害者も救われるような方向に裁判を誘導していくのだ。身を切るような痛みとともに。

 ひとつの正論だし、理想ではある。そんなことはわかってる。加害者にも遺族はいて、被害者には今後の人生があって……。
 でもさ。
 鬼になろうが修羅になろうが、たとえどんなに醜い人間になろうとも、許せないことってあるだろう?
 幸い僕にはそんな経験はないけれど、でももし仮に自分が同じ状況におかれたら、犯人が生きているかぎり心を安くしては寝られない。出所するなんてことになったら、自分を抑えていられる自信がない。
 人の命の行方を決める、簡単に考えてはならないことだ。いや、理屈ではわかってるんだけどね……。
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俺の妹がこんなに可愛いわけがない(3)

2009-09-27 08:34:08 | 小説
俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈3〉 (電撃文庫)
伏見 つかさ
アスキーメディアワークス

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 十二月二十四日。仲むつまじい恋人たちが、愛を囁き合う夜。クリスマスイブ。
 そんな夜に俺は……妹とラブホテルにやってきていた。

「俺の妹がこんなに可愛いわけがない(3)」伏見つかさ

 勉学運動ルックスに外面、すべてにおいて完璧超人な妹・桐乃には、実は「妹もの」エロゲー好きという残念な顔があった。凡庸な兄・京介が、桐乃の様々なわがままに振り回されるシリーズ第3巻。
 読んでる自分が腹立たしくなるくらいだめな(ほめ言葉)小説なんだけど、ぬるい中にも毎回きっちり一本筋の通ったストーリーラインが通っているのがいいところ。1、2巻は「父親との対立」、「親友との絶交」。本巻のテーマは「わなび」。これは英語で「wanna be」つまり何かがしたい、何かになりたいという意味で、転じて小説家やら漫画家やら、クリエイターになりたいけどなれない人たちを揶揄する目的で使われている言葉だ。桐乃の書いたケータイ小説が何と書籍化されることになり、一騒動起こる展開。沙織、黒猫、主人公の、桐乃を守るための共闘が熱い。
 それにしても、何事にも手を抜かない桐乃はすごい。小説の取材のためならいきなり往来で水をかぶったり、兄貴とラブホテルい行くことも辞さない。とにかくすごい根性をしている。根性入った人の好きな僕としては、かなりの好感度アップです。
 麻奈美はいつも通りかわいいです。大好きな京介と一緒にいる時のふにゃっとした微笑みには、毎度癒されます。今回は、田村家(麻奈美の家)での京介とのお泊まりや、京介にクリスマスイブに予定が入っていることを知った時の動揺など、べただけど良く、思わずにやにやしてしまう。これだけでも読む価値あるなあ。
 わなび関連ということで、同人やりながら投稿したりもする黒猫にスポットが当たる巻でもありました。邪気眼厨二病な彼女の本気が垣間見えた。話の流れ上、京介との恥ずかしいやりとりがあったりして、そういう意味でも存在感増したね。
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DUST

2009-09-25 19:23:23 | マンガ
特別法第001条DUST (バーズコミックススペシャル)
山田 悠介
幻冬舎コミックス

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「DUST」原作:山田悠介 作画:壱臣

 2012年。特別法第001条施行。通称ダスト法とも呼ばれるその法案は、世にはびこるニートどもを島流しにし、最低限のライフラインしかない無人島で500日間のサヴァイヴァル生活を強制、社会復帰を狙うことを目的としていた。
 主人公・章弘以下6人の男女は、電気と家具類、米のみが残された空き家を見つけると、農耕と採集を積み重ね、仲間割れもなくなんとか2週間を過ごす。時期は夏を迎え、このまま平穏に暮らしていけるとかと思ったものの、同じように島流しにされた他のグループの襲撃を受ける。
 やられる前にやれ。
 武闘派の石本の号令の下、章弘たちは他のグループへの復讐と先制攻撃を企てる。血を血で洗う闘争が始まる。そんな状況に疑問を挟む章弘は、一方で紅一点の真由との仲を深めていき、ついには……。

 適当な舞台設定、薄いキャラ造形、投げやりなラスト。いかにも山田悠介らしい一作。イメージとしてはハンパな「バトルロワイヤル」ってところかな。人殺しを屁とも思わない執行機関の人たちに閉ざされた空間で、人の本性が露になる瞬間が見ものなわけなんだけど……。先に「自殺島」を見たせいもあるかもしれないが、雑な造りしか目に付かなかった。
 原作は未読だが、かなり忠実に再現できているのではないだろうかと思われる。山田悠介ってこんなだよね。
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鋼殻のレギオス(7)ホワイト・オペラ

2009-09-25 07:41:30 | 小説
ホワイト・オペラ 鋼殻のレギオス 7
雨木 シュウスケ
富士見書房

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「鋼殻のレギオス(7)ホワイト・オペラ」雨木シュウスケ

 ニーナの帰還を喜ぶ間もあらばこそ、マイアスとの都市対抗戦が開かれることに。レイフォンという伝家の宝刀を要する17小隊は、主戦場ではなく外縁部より秘密裏に潜入。マイアス生徒会への電撃戦を命じられた。
 しかしそうは問屋が卸さない。サリンバン教導傭兵団の団長・ハイアが最後の、そして決死の戦いをレイフォンに挑み、フェリまでもが巻き込まれ、17小隊の編成に傷が生じてしまう。
 他の小隊から増員をもらいはしたものの、レイフォンとフェリの代打は務まるべくもない。戦いの行く末や如何に?

 ニーナ奮闘。リーリン上陸。天剣授受者3人対汚染獣老生体の死闘回顧録。などなど、見所満載で非常に面白かった。とくに戦闘面。天剣授受者の圧倒的な暴力や、都市対抗戦における大規模戦闘。それぞれに割かれたページ数こそ少なかったものの、「戦い」な雰囲気が伝わってきてよかった。局面の推移が大雑把すぎるきらいはあるけども。
 あとはまあ、ニーナ、フェリ、リーリンと、女子陣がかなり「自覚」し始めた模様。次巻は嵐が吹き荒れる……かな?
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裁判員の女神(1)

2009-09-23 19:43:14 | マンガ
裁判員の女神 1 (マンサンコミックス)
毛利 甚八
実業之日本社

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「裁判員の女神(1)」作:毛利甚八 画:かわすみひろし

 裁判員制度開始から4ヶ月が経つが、当初懸念されていたほど過酷な判決は出ていないと聞く。私見だが、むしろ、日本人独特のフェミニズムというか日和見が悪い方向に働き、優しい判決が多くなっているのではないだろうか。
 本書は、女性裁判官・勇樹美知子が人口50万人の海鳴市の判事補として赴任されるところから描かれる。かつて、裁判所から出所したばかりの老人が塀の中へ戻りたい一心から通り魔的に少年を殺した事件があった。その事件の遺族である彼女は、しかし罪を憎んで人を憎まず、真剣に犯罪に向き合おうとする芯の強い女性に成長していた。
 初回の題目は、強盗殺人。個人金融を営む強欲ババアを扼殺した被疑者を死刑にするか否か。新制度に慣れない裁判員たちは、果たしてどのような結論に至るのか……?

「営業の牧田です。」のかわすみひろし作画で、しかも裁判員裁判ものということから、密かに注目していた作品。新制度が発足したばかりで右も左もわからない裁判員たちに説明するという形で、わかりやすく明解に描けているのは良いところ。
 しかし、うーん……主人公が重罰に反対なんだね。そこがちょっと気に入らない。もちろん、「死刑じゃ死刑じゃ」いってる主人公はどうかと思うんだけどね。そこまで犯罪者を信じられる根拠はどこにある? 「目には目を」といっちゃだめなのかい?
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植物図鑑

2009-09-22 07:51:42 | 小説
植物図鑑
有川 浩
角川書店(角川グループパブリッシング)

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「お嬢さん、よかったら拾ってくれませんか? 咬みません。躾のできたよい子です」

「植物図鑑」有川浩

 飲み会の帰り道。さやかは行き倒れの男を拾った。酔っぱらっていたとはいえ大胆な行動をしたと思う。田舎の両親が聞いたら卒倒するかもしれない。でも、彼には何か見過ごせない部分があった。常識で割り切って通りすぎるには、もったいなく思えてしまうような何かが。
 その何かはほどなく判明する。一宿の恩にとふるまってくれた彼の手料理は、私生活に極めてずぼらなさやかの胃袋を鷲掴みにした。
 彼は、イツキという名以外は、名字も来歴も、自らのプライベートを一切明らかにしない。でも、それでもいいと思っていた。誰にだって触れられたくない部分はある。今が楽しければそれでいいじゃないか。下手につっこんで、この生活を壊したくない。適度に男前で優しくて、野草採集の趣味のある彼とのまったく新しい共同生活は、それほどに新鮮で魅力的だった。
 でも、2人とも知っていた。この幸せは仮初めのものだと。平穏と幸福のしっぺ返しは、いつか必ずやってくるのだと。 

 甘い。ものすごく甘い。「図書館戦争」で見せたベタ甘なんか目じゃない、砂糖菓子のようなお話。
 見所は、題名に冠した通り、様々な野草の知識に秀でたイケメン男子イツキが、タンポポやらフキノトウやらユキノシタなんぞという野草を採りまくり調理しまくるところ。都会っ子のさやかが、新たな世界の知識の扉に触れるとともに、謎多きこの男に惚れまくるところ。この2つが琴線に触れない人にはおすすめできない。僕はまったくといっていいほど自炊に興味がないし(チャーハンくらいは作れるけども)、まず恋愛ありきなストーリーは苦手なので、正直あまり楽しめなかった。
 唯一「今を壊したくないから知らないでいい」ってとこには共感できた。うんうん、そうだよね。いずれ破綻がくるのがわかっていても、怖くて踏み出せないもんなんだよね。しみじみ。
 作者の出世作、「図書館戦争」から入ってきた人には、事件性のなさやキャラ立ちの弱さ、地味〜にふつ〜に話が進んでいくところが受け入れられないかもしれない。ごてごてのベタ甘と波乱と別離とそして……そんな当たり前の組立てが……。だめ、というんじゃないんだけど、有川浩にしてはインパクトに欠ける。それともこれが常態なのか?
 ところで、さやかが文中よく「女ってのは」って口にするんだけど、こういう言い回しをする女性は多いよね。男性だって「男ってのは」っていわないわけじゃないけど、女性のそれに比べると少ない気がする。それは僕があまり女性心理を理解していないからいわれる機会が多いからなのかな? 世間一般の男性諸君はあまりいわれないのだろうか? なんとなく気になった。
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鋼殻のレギオス(6)レッド・ノクターン

2009-09-20 09:43:12 | 小説
レッド・ノクターン―鋼殻のレギオス〈6〉 (富士見ファンタジア文庫)
雨木 シュウスケ
富士見書房

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「鋼殻のレギオス(6)レッド・ノクターン」雨木シュウスケ

「ニーナは現在、行方不明だ」
 電子精霊ツェルニを探して機関中枢部に向かったニーナが突如として姿を消した。フェリが念威で監視する中、痕跡も残さずに消息を立った。
 とり残されたレイフォンは落ち着かない。戦う理由をニーナに依存している彼は恐れ迷い、暴走を続けるツェルニのせいで汚染獣と連戦。疲労を募らせていく。
 一方レイフォンの幼なじみリーリンは、天剣授受者サヴァリスの庇護の下、ツェルニを目指す放浪バスに乗っていたが、学園都市マイアスで足止めをくってしまう。都市警察の監視下、マイアスが事件に巻き込まれていることを知るリーリン。事件が解決するのはいつのことになるかわからないが、すべての放浪バスが足止めをくらう現状では脱出方法がない。かといって都市警察に反抗するわけにもいかない。所在なく毎日を過ごす彼女の前に、金髪ショートカットの例の彼女が姿を現した……。

 まさかのライバル邂逅。マイアスの危機について話し合いながら、「頼れるけど鈍感で無茶しすぎなあいつ」語りをするシュールな状況に。まあ、この時点で気づけというのは無理があるかな。
 その他は、汚染獣の素性、というか秘密がちらりと顔を出した。クラウドセルとか分離マザーとか、いかにもな単語の羅列に、自分が今ライトノベルを読んでいることをしみじみと実感させられた。いや、嫌いじゃないんだけどね。読みやすいし。なんというか、すごく懐かしい気分になった。
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自殺島

2009-09-18 17:14:50 | マンガ
自殺島 1 (ジェッツコミックス)
森 恒二
白泉社

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「自殺島」森恒二

 薬物の服用にリストカットに練炭に、自ら命を絶とうとする人は後を絶たない。時の日本国政府は、中でも常習指定のついた人間の自由意志に任せるという形で、合法的に流刑する制度を施行した。
 そして、そんな常習指定者が流される無人島・通称自殺島にセイはいた。病院のベッドで意識朦朧としたまま書類にサインをし、気がつけば無数の常習指定者と共に島にいた。
 島にたどり着いた人間の選択肢は2つしかない。いつものように自ら命を絶つか、生きるか。常日頃から自殺のことしか頭にない連中だから、さっそく飛び降りや首吊りなどで多くの人が死んだ。しかし一部には、当面の飢えや渇き、他人に死に場所を決められるという現実を受け入れられず、サバイバル生活に乗り出す者もいた。
 セイは、明確な意思のないまま、流されるように集団の中に入った。生きたかったわけではない。ただ怖かった。冷静で知的な幼馴染のカイ。積極的に人と接しリーダーシップをとれるリョウ。自ら動こう、生きようとする人たちに違和感を覚えつつも同化しようとするセイの目に、容赦のない現実が映る。暴力、盗難、略奪、強姦、公的な権力のない島で、しかも一度は人生を踏み外した者のみが集う集団で、犯罪の発生は避けられないことだった。
 そんなある日、セイは野生の鹿を見つける。生命力に満ちた彼らの無心な瞳や神秘的なたたずまいに触れ、飲まれるように、セイは山に分け入った。ナイフと自作の弓を手に、行き先は誰にも告げず。それは、集団からの決別を意味していた……。

「ホーリーランド」の森恒二の最新作は、常習指定者たちによる極限サバイバル。死のうとしていた者たちが生きようとあがくという、なんとも皮肉な設定で、いかにも森らしい作品。
 漁に採集に水場の確保。かつて住んでいた人々の痕跡漁り。サバイバルマンガのツボはしっかりおさえつつも、明るさも救いもなくばしばし人が死ぬため、ものすごいとっつきにくいのだが、第1巻はあくまでも状況説明巻なので、ここで読むのをやめるのはあまりに惜しい。人殺し上等な舞台で行われる「ホーリーランド」だ。この先何が待っているのか、想像しただけでぞくぞくするじゃないか?
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アクセルワールド(2)〜紅の暴風姫〜

2009-09-17 12:34:08 | 小説
アクセル・ワールド〈2〉紅の暴風姫 (電撃文庫)
川原 礫
アスキーメディアワークス

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「アクセルワールド(2)〜紅の暴風姫〜」川原礫

 数千人のバーストリンカー人口の中でも特異な「飛行能力アビリティ」を獲得した「シルバークロウ」は連戦を重ね経験値を積み、4レベルになった。しかし「遠隔攻撃に弱い」という特質が周囲にバレ、プレイヤーの醜い子豚・ハルユキの怯えも重なり、負けがこみはじめる。痛みの感覚があるとはいえゲームには違いないのだからもっと思い切りやったら良さそうなものだが、「負けたら黒雪姫に呆れられる、捨てられる、唯一見つけたこんな僕の輝ける場所が失われてしまう」と負の感情に縛られてうまくいかない。
 そんなハルユキの前に、ある日奇妙な闖入者が現れる。11歳くらいの小学生で、赤毛でソバカスでツインテールな「自称親戚の子供」が、なぜか自宅のキッチンで鼻歌混じりに料理を作っていた。ハルユキのことを「お兄ちゃん」とハートマーク付きで慕ってくるそいつは、しかしよくよく調べてみると偽者で、なんと純色の6王が1人・スカーレット・レイン本人によるソーシャルエンジニアリングだったのだ……。

 脱・醜い子豚プロジェクト第2巻。
 黒雪姫からの告白という得がたい幸運に浴し、ハッピーラッキーな学園生活が送れるかと思いきや、けっこうストイックな訓練の日々を過ごしているハルユキが、らしくて良い。スカーレットレインとの浴室でのスキンシップや黒雪姫と3人でのハーレムお泊まりなど、ツボを押さえたイベントも多々あるのだが、ハルユキの控えめな性格……というか自己卑下のせいで、そこまで進展した感はない。
 1巻読後にもっとバトルが見たいなあと思っていたのだが、そのためか、本巻はバトル多目。しかも今までのような1対1のバトルではなく、 MMORPGのような集団戦が出てきて、ぐっと厚みが増した。おぼろげだった黒雪姫の過去やスカーレットレインのしがらみというスパイスも効いていて楽しめたし、次巻が非常に待ち遠しい。
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