民間宇宙船 ドッキングに成功5月26日 7時47分
アメリカの民間企業が開発した無人の宇宙船が、日本時間26日午前1時すぎ、国際宇宙ステーションとのドッキングに成功しました。民間企業の宇宙船としては初めてで、民間による宇宙開発の可能性をさらに広げることになりそうです。
国際宇宙ステーションとのドッキングに成功したのは、アメリカのベンチャー企業「スペースX」社が開発した無人宇宙船「ドラゴン」です。
地球の周りを回る軌道を順調に飛行してきた「ドラゴン」は、日本時間25日午後11時前に、宇宙ステーションのロボットアームによってつかみ取られ、およそ2時間後の26日午前1時すぎ、宇宙ステーションとのドッキングに成功しました。
今回、「ドラゴン」は、今月22日に打ち上げられてからエンジンなど、ほぼすべての機能が順調に動き、ドッキングも当初の予定よりおよそ2時間ほど遅れたものの、NASA=アメリカ航空宇宙局が求めたとおりの安全な飛行を実現しました。
これまで、宇宙ステーションとのドッキングは、国が開発した宇宙船しか許されていませんでしたが、創業からわずか10年のベンチャー企業がドッキングを成功させたことに、宇宙開発の関係者からは驚嘆の声が上がっています。
今回の成功は、去年7月に引退した「スペースシャトル」の後継機の開発を民間企業に任せたアメリカ政府の宇宙政策を強く後押しするとともに、民間による宇宙開発の可能性をさらに広げることになりそうです。
“特筆すべき歴史的成果”
ホワイトハウスのホールドリン大統領補佐官は声明を発表し、「科学技術の分野で特筆すべき、歴史的な成果だ」と述べて、「スペースX」社をたたえました。そのうえで、オバマ大統領が、引退したスペースシャトルの後継機の開発を民間企業に任せる政策を打ち出していることを挙げ、「今回の成功は、オバマ大統領がまさに思い描いていたことだ。急成長を見せるこの産業を今後も支援していく」と述べ、NASA=アメリカ航空宇宙局は、火星の有人探査に向けた研究開発に集中させる方針を改めて強調しました。
ドッキング成功の意義
アメリカの民間企業が開発した無人の宇宙船が、国際宇宙ステーションとのドッキングを成功させたことで、民間による宇宙開発の可能性が大きく広がることになります。
宇宙開発は、これまで国が主体となって進められ、主に大企業が開発を担ってきました。こうした大企業の中には、40年以上前から宇宙開発に関わっているところも多く、圧倒的な量の技術とノウハウを蓄積しており、新規の参入を阻む要因にもなってきました。
しかし、今回のドッキングの成功で、歴史の浅い規模の小さなベンチャー企業でも、宇宙開発に参入する道が大きく開けました。
これを可能にしたのは、NASA=アメリカ航空宇宙局が、ベンチャー企業にはない技術や蓄積した情報を積極的に提供して補ったからです。これによって、規模の小さいベンチャー企業の宇宙開発への参入を可能にし、安全性を第一に据えるNASAとの連携が実現しました。この連携の成功によって、限られた予算のなか、「スペースシャトル」の後継機の開発を民間企業に任せたアメリカの政策は、宇宙開発の新しい方向性を示すことにつながりました。
また、今回の成功でNASAは、国際宇宙ステーションよりも地球から離れている小惑星や火星の有人探査に向けた研究開発に資金を集中させる計画をさらに推し進めることになります。
その一方で、民間企業への依存をさらに高めることで、宇宙開発の関係者の間からは、ビジネスとは対極に位置する、営利にとらわれない人類全体のための科学の探求が後退するのではないかと懸念する声も出ています。
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