── ニューシングル「ノスタルジア」は映画『時をかける少女』の主題歌。楽曲の雰囲気といい、歌詞のテーマといい、映画の世界観とすごく合ってますよね。
【水野良樹】 実はこの曲、19才くらいのときに書いたんです。路上ライブでもずっとやっていたんですけど、“これでお客さんの足を止める”っていう勝負曲だったんですよね。ライブハウスの店長さんが気に入ってくれたり、いろんな人をつなげてくれた曲でもあって。
── いきものがかりにとって、大きな意味を持ってる曲なんですね。
【山下穂尊】 そうですね。きっとどこかでリリースするんだろうなって思いつつ、4、5年経ってしまって。
【水野】 今回の主題歌のお話をいただいたときも、最初は“新しい曲を作ってください”ってことだったんです。でも、「ノスタルジア」がぴったりだったんですよね。“時計の針”っていう言葉が出てきたり、ホントに奇跡的な出会いだったなって思います。
── 吉岡さんにとってはどんな存在だったんですが、この曲。
【吉岡聖恵】 すごく思い入れがありますね、やっぱり。ただ最初はどう自分と照らし合わせていいかわからなかったんです。この曲の女の子のキャラクターが自分のなかで濃すぎて・・・。この子って、恋愛でボロボロになっているわけですよね。しかもまだ相手に未練が残っていて。そのとき初めて言いましたね、「この曲は歌いたくない」って(笑)。
【水野】 この10年間で1度だけですね。「歌いたくない」って言われたのは。
【山下】 1年くらいかかったよね、歌えるようになるまで。
【吉岡】 そうだね(笑)。路上で歌っていたころは、もっと繊細で、か細い感じだったんです。細かくビブラートをかけるような。でも今回のレコーディングでは、歌い方が変わりました。私と主人公を重ねるんじゃなくて、曲を伝える、ということをちゃんと考えて。あとは“この女の子にしっかり自立してほしい”っていう気持ちを込めることだったり。
── 結果的には、このタイミングでリリースするのが一番良かったのかもしれないですね。
【吉岡】 そういうふうに言ってくれますね、メンバーが。
【山下】 声や歌い方もぜんぜん違いますからね。
【水野】 うん、それはすごく感じる。インディーズの頃の「ノスタルジア」よりも、今の「ノスタルジア」のほうがいいと思ってるんですよ。吉岡の声がいろんな変遷を辿って――上から目線で言わせてもらえれば、ホントに成長したなって(笑)。
【吉岡】 いえいえ。ありがとうございます(笑)。
【水野】 でも、ホントにそうなんです。みなさんに聴いてもらえるまでにちょっと時間がかかっちゃったけど、中途半端にやらなくて良かったなって思います。
──いきものがかりの本質を伝える曲だと思うし、こういう理想的な形でリリースできるのはホントにいいことですよね。そしてカップリングには、原田知世さんが27年前に歌った「時をかける少女」のカバーを収録。原曲と違って、元気いっぱいのボーカルが印象的でした。
【吉岡】 こういう取材で「大好きな曲なんですよ。どんなふうにカバーされるのか楽しみで」って言われることが多くて。それを聞いたあとだったら、やれなかったかも(笑)。
【山下】 歌い出しの声を聴いて“若い!”って思いましたね。こうやってカバーを楽しめるっていうのも、自分たちらしさかなって思います。