東京都世田谷区の桜新町商店街で、「貴重な髪の毛」を2度にわたり引き抜かれた「波平さん」。漫画「サザエさん」に登場するこのキャラクターの銅像が、思わぬ注目を集めている。商店街は「付け直しても、またとられたら困る」と頭を悩ませている。
「ここだ、ここだ」「毛が本当にないよ」。問題発覚後、記念撮影をしたり、のぞき込んで頭を触ったりする人が後を絶たない。近くに住む小学3年生の女児(8)は頭頂部を携帯電話のカメラで撮影。「像はあまり意識してなかったけど、かわいそうだからやめてほしい」と話した。
道を挟んで向かい側の写真店に勤める男性(57)は「ひっきりなしに誰かが波平の周りにいる。フィーバーしているね」と驚く。
波平像があるのは東急田園都市線桜新町駅近く。原作者の故長谷川町子さんが長年暮らしたことにちなんで通称「サザエさん通り」と呼ばれる。街ではサザエさんのアニメの曲が流れ、ほのぼのとした雰囲気を醸し出している。
商店街振興組合の坂口賢一理事長は「犯人捜しをすると殺伐としてしまって、サザエさんのイメージを損なう。被害届は出したくない」と困り顔だ。
「髪の毛」は水色に着色した鉄製のワイヤ。接着剤などで頭のくぼみに固定され、かなりの力でないと抜けないという。
スペアも常に用意している。しかし、「付け直しても、またとられるかもしれない。波平さんには髪無しで少し我慢してもらわないと……」。次の「植毛」は「騒ぎが収まってからこっそりやります」。
自ら植毛する有志も現れた。坂口さんによると、23日午後、黒のこよりのようなものをセロハンテープで頭にはった男性がいたという。しかし、数時間後にはなくなっていたという。