名張毒ぶどう酒事件:名古屋高裁、25日に「再審」判断
毎日新聞 2012年05月21日 21時13分(最終更新 05月21日 23時22分)
一方で検察側が有利と受け止める分析も出た。ペーパークロマトグラフ試験では「エーテル抽出」で成分を溶かし出す。差し戻し審の鑑定人がニッカリンTのエーテル抽出をしたところ、今度はトリエチルピロホスフェートが消えたのだ。これについて弁護団は「ニッカリンTの量など事件当時と鑑定条件が異なる」と主張した。
検察側は当時の対照検体からトリエチルピロホスフェートが検出された点を「対照検体をエーテル抽出しなかった」と主張した。だが、1964年の津地裁で、三重県衛生研究所の鑑定人は「対照検体もエーテル抽出した」と証言している。
◇名張毒ぶどう酒事件◇
1969年の名古屋高裁の確定判決によると、奥西死刑囚は三角関係清算のため妻と愛人にニッカリンTを飲ませて殺害しようと計画。61年3月28日、名張市内の集落懇親会で農薬入りぶどう酒を飲んだ妻や愛人ら5人が死亡、12人が中毒症状になった。奥西死刑囚は「ニッカリンTを混ぜた」と自白、殺人容疑などで逮捕された。起訴直前に否認に転じ、1審津地裁(64年)は無罪判決。2審名古屋高裁では死刑判決を受け、最高裁が72年に上告を棄却、死刑が確定した。