湖南省常徳市桃源県に住む男性、劉双全さんは5月17日、82歳の誕生日を迎えた。劉さんは子どもに恵まれなかったが、結婚して60年以上になる妻と仲むつまじく暮らしていた。誕生日を祝うため、17日には親族や友人が大勢、劉さん宅を訪れた。午後3時ごろ、劉さんは「ちょっとトイレに」と言って宴席を立った。中国新聞社が報じた。
劉さんがひとりでトイレを使うのは難しいので、いつも通りに妻が手助けした。劉さんは便器に腰掛けながら突然、痙攣(けいれん)しはじめたという。妻は大声で、人を呼んだ。
宴席にいた人が駆けつけて、劉さんをベッドに横たえた。大声で呼びかけても反応はなく、息もしていなかった。体温も次第に下がっていった。
劉さんの妻は、劉さんの体にすがり付いて泣いた。「あんたったら、いくときは、教えてくれるはずだったじゃないの。私はひとりで、どうすればいいのよ」と、劉さんの体を揺さぶった。劉さんは冷たい体を横たえたままだった。
めでたい誕生日が、つらい別れの日になった。集まっていた劉さんの親戚が死に装束などを買ってきた。劉さんの体を洗い清めて、死に装束を着せた。
夜になってひつぎが届いた。人々は劉さんの体をかかえて納棺した。劉さんの妻は、翌18日午前1時を過ぎてもひつぎのそばに座り、劉さんを見つめながら、むせび泣いていた。親戚らは、妻の体が心配になった。説得し、どうにか寝かしつけた。
劉さんの妻は、夜明けと前後して、劉さんを納めたひつぎのところに行った。日が昇れば、皆で埋葬する。少しでも近くにいたかった。
すると、ひつぎの中から「ん、ん、ん」とかすかな声が聞こえてきた。劉さんの妻は驚き、別の親族を呼んだ。まだ暗かったので、懐中電灯で照らしてみた。すると、劉さんのまぶたが、かすかに震えていた。
劉さんの妹が大声で「お兄ちゃん、お兄ちゃん、起きるの!?」と呼びかけた。すると劉さんは、たどたどしい口調ではあるが「あ、ああ。起きようか」と話した。しかし、ひつぎの中に横たえられていて、うまく身動きができない。劉さんは見下ろしている人々に向けて両手を伸ばし、「起きるのを助けておくれ」と、先ほどよりしっかりした言葉で呼びかけた。劉さんは「復活」した。
劉さんは高齢である関係で、もともと体の調子はあまりよくなかった。意識を完全に失い、呼吸も停止して体温が低下したのは、何らかの病変が原因で仮死状態になったからと考えられている。「復活」してからも、言語による意思疎通能力に低下が見られるなどで、今後も手厚い介護が必要という。
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◆解説◆ 中国の農村部ではきちんとした医療機関が存在しないなどで、死亡の判定も「あいまい」な場合がある。
2006年6月には、広西チワン族自治区で“死亡”して2日後に男性が「復活」した。埋葬したが3時間後に、その場を立ち去りかねていた妻が、地中からの叫び声を聞きつけた。
07年5月には重慶市で、病気だった17歳の女性が「復活」した。火葬の準備をしていた職員が、女性が呼吸をしていることに気づいた。医師が駆けつけ、蘇生に成功した。
12年2月には、広西チワン族自治区で“死亡”したと思われた女性が「復活」した。自宅内に安置していた“遺体”が消えたので集まった人々が驚いて探したところ、厨房(ちゅうぼう)で粥(かゆ)を作っていた。女性は「目が覚めたら、おなかがすいていた」と説明した。
12年4月には四川省内で、“死亡”したとみられた女性が4日後に息を吹き返した。告別式の最中に弟が、女性の手が動いていることに気づいた。(編集担当:如月隼人)