金沢の弁護士が離婚・女と男と子どもについてあれこれ話すこと

石川県金沢市在住・ごくごく普通のマチ弁(街の弁護士)が,日々の仕事の中で離婚,女と男と子どもにまつわるいろんなことを書き綴っていきます。お役立ちの法律情報はもちろんのこと,私自身の趣味に思いっきり入り込んだ記事もつらつらと書いていきます。

 私が初めて沖縄の竹下小夜子先生とお会いしたのは2002年11月7日に開催された全国被害者支援ネットワークの支援員検討会分科会DV・児童虐待でした。
 そこで竹下先生はいろいろなことを話されていたのですが,「暴力の連鎖」について,要旨,次のようなことを情熱的に語られました。
 私は,会場で身体が震えました。
 震えながら,その言葉を逃すまにと必死に,モバイルPCに打鍵してました。
 今日,ご紹介するのは,そのペーパーに残っていたものす。
 はなはだ不十分で不正確なものですが。

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 今日,ここには,沖縄からのの発信をしようと思ってきた。
 中央の学者は「暴力の連鎖」を強調する。
 しかし,実際には,違う。
 沖縄は,「暴力の連鎖」は事実と違うと言い続けた。
 「暴力の連鎖」論が広まるせいで,虐待を受けた子どもが,社会からはじかれている。
 また,子どもは,自分も将来虐待をするのではないかということを内面化させてしまっている。
 
 アリス・ミラーの説…
 教育心理学においても,ピグマリオン効果,期待を与えることで,期待を与えられた方がよい成果を上げるという期待効果が言われている。

 心理学の実験においても,実験者の期待効果が大きく影響する。
 マウスの実験。マウスだって実験者が期待を持つ場合と持たない場合で実験結果が違う。これが人間だったらどういう結果になるのか。
 
 支援に関わるものが,どういう見方で相手に接するかが非常に重要だ。

 19世紀的学説…過去の因果関係,生育歴からの質問がなされる。
 しかし,過去の因果関係で分析し,縛り付けるような理論が本当に正しいのか。

 人間は,本来,もっと能動的で,クリエイティブではないのか。

 こういう考えを持って支援に関わる,

 人間本来の力を信じて支援に関わる者とそうでないものとでは大きな違いが出る。
 
 ノンバーバル・コミュニケーション。
 言語外で伝わることも重要だ。

 支援員自身が,本気で,その人の本来の力と可能性を信じて関わる。
 その中で,言語外で伝わるものは大きい。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 

 竹下小夜子先生は,精神科医として暴力・虐待の被害にさらされ続けた外傷体験が複雑性PTSDを引き起こしかねないことを否定するものではありません。
 また,アリス・ミラーの名前がプラス評価で出てくることから,「暴力の連鎖」,「虐待の連鎖」と呼ばれるものが現実にあることも否定するものではないと思います。

 竹下小夜子先生が「暴力の連鎖」が事実と違うとおっしゃったのは,文脈全体からすると,「暴力の連鎖」,「虐待の連鎖」と呼ばれる深刻な問題があることを前提としつつも,その問題が皮相的に理解され,回復を妨げる言説と化しているような状況に警鐘を鳴らしたものと理解できます。

 これは,犯罪被害者支援ネットワークの支援員研修での発言です。
 やや辛口な表現をしますと,心理の素人がちょっと勉強して犯罪被害者の支援活動に携わっているわけです。
 竹下小夜子先生は,そういう支援員の研修において,実際の支援の場では,「暴力の連鎖」論の皮相的な理解が有害であることを強く訴えたかったのでしょう。

 私は心理の素人ですが,ここで,竹下小夜子先生が訴えたかったことを,こう理解してます。

 「暴力の連鎖」と呼ばれるものは,虐待のインパクトを考えると,あり得る。
 しかし,そうではない別の可能性も十分にあり得る。
 トラウマからの回復の道のりの中,豊かな人間性,高い精神性を獲得していく人たちは現実に多数存在する。
 回復を課題とする人に,ネガティブなメッセージを送ることはしないでいただきたい。
 支援者は,その人が本来持っている力を心から信頼してほしい。 
 言葉であれ,言葉の外のものであれ,その人にポジティブなメッセージを発し続けてほしい。
 それが回復を課題とする人を力強く支えていく。
 その人自身が,本来の力でもって回復していく。
 そうして,「暴力の連鎖」と呼ばれる呪縛を断ち切っていく。
 私たちは,そうあらねばならない。

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