奨励プログラムとは別の還元策も始まる。ニコ動は動画の音楽をタダでダウンロードできる「NicoSound」という新サービスを6月にも始める計画だ。新たにドワンゴは日本音楽著作権協会(JASRAC)と包括契約を締結した。これも考え方は奨励プログラムと同じで、ドワンゴが一括して楽曲のダウンロードにかかる著作権料を収める。例えばボカロ曲の作者がJASRACに信託していれば、ダウンロード数に応じて著作権料が還元されるようになる。
「みんな、思い込みに縛られている。ユーザー生放送が始まる前、顔出しはしないだろうって言われた。プレミアム会員制では、動画サイトで課金は無理だろうって言われていた。そういう固定観念を崩していくのが好きなんですよね(笑)」。川上会長はそう無邪気に語る。
■「長期戦で腰を据えないと世の中は変えられない」
ニコ動だけで生活できるような経済圏を作る――。無理だろうと唾棄されようが川上会長はまい進する。そして、日本で培った新たなネット文化はついに世界へと挑む。ただ、具体的に海外展開がニコ動経済圏にどう寄与するか、はまだ先の話だ。
「いきなり現金化するエンジンを作ろうとしても難しい。まずは、ニコ動が海外で人気になる。日本のコンテンツを現金化しやすいエネルギーに『変換』する必要がある。長期戦。どっしりと腰を据えてやる。世の中を変えようと思ったら、生半可なことでは無理なんですよね」
ニコ動事業の直近半期(11年10月~12年3月期)の売上高は約66億円、営業利益は6億2500万円。11年6月から安定して黒字を出せるようになったが、株価は芳しくない。5月24日放送のテレビ東京系列「カンブリア宮殿」で作家の村上龍氏と対談した川上会長は、ニコニコ生放送でも中継した収録でこう語った。
「ドワンゴの株価が一番高かったのは7、8年前で、ずっと下がってるんですよね。ニコ動は資本市場ではあんまり評価されてない。ただ、(目先の)株価や利益に縛られて生きるのって僕は『ぬるい』と思ってるんですよね。本来、会社というのは生存競争で死ぬか生きるか。だから僕は生き残ろうとはしています。で、生き残ろうとすると、今期の利益や株価がどうのこうのとかね、そんな甘ったれたこと言ってて大丈夫なのって僕は思いますよね」
■ユーザーは搾取の対象ではなく、共生する仲間
常識外れだろうが、川上会長は株主の顔色をほとんどうかがわず、直近の業績にもこだわらない。ただ、ひたすらにユーザーと向き合い、迎合はしないが「共生」しようとする。4月29日深夜、6時間以上にも及んだニコ動スターらによるライブ、超パーティーが終わったあと、出演した数十人が参加したささやかな「打ち上げ」に、川上会長も顔を出した。舞台裏をこっそりとのぞいてみた。
「ドワンゴっていう会社は、ふつうのIT企業とは違ってですね、お金を稼ぐことばかりじゃなくて、使うことの方が大切だと、そう信じている会社です。これからも皆さんのためにですね、お金に関係なく、いいニコニコの世界を発展するためにいろいろと考えてみたいと思います」
疲れ目の川上会長が挨拶し、続いて運営スタッフも謝辞を述べると、そこにいたユーザーたちは聞き入り、惜しみない拍手を送った。中には涙を浮かべる者もいた。運営会社の社長ではなく、我らを率いる仲間のボスとして心酔しているようだった。(完)
(電子報道部 井上理)
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