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「ソーシャル革命」の裏側

「ニコ動」世界へ ネット文化変え、稼げる経済圏を
ネット上の才能を現実世界に解放~ドワンゴの挑戦(3)

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2012/5/22 15:06
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ボカロ曲「スイートマジック」に合わせたCG作品のコンテンツツリー。親作品の原曲を超える175万回の再生がある
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ボカロ曲「スイートマジック」に合わせたCG作品のコンテンツツリー。親作品の原曲を超える175万回の再生がある

 奨励プログラムに参加するためには、ニコ動内での作品の親子関係を整理する「コンテンツツリー」という機能に登録する必要がある。二次創作、三次創作の作品であれば、引用元の作品を親としてひも付けなくてはならない。奨励プログラムの報酬額は、前述のように子作品や孫作品など下に連なる関連作品の多さや人気も加味される。

 これにより、あらゆる創作のベースとなるボカロ曲の動画はもとより、踊ってみた動画が参考とするオリジナルの振り付け動画や、歌ってみた動画が映像に使うCGアニメの動画といった、「再生回数は伸びないが重要な役回り」の著作者も報われる。川上会長は言う。

 「僕らはネット文化のあり方を変えようとしている。奨励プログラムはその1つの挑戦。かなりニコ動の文化や雰囲気が変わるかもしれない」。奨励プログラムはリスクを伴う挑戦だ。しかし文化を変えずして先に進むことはできない。ニコ動の歴史とは、ネット文化を変革する歴史ともいえる。

■役に立たないことを役に立つへ変換

 初期のニコ動は商業コンテンツを全力でいじり倒す世界だった。役立たずで、くだらない世界だ。違法コンテンツが問題となり削除が進むと、ユーザーは自ら遊べるコンテンツを自給自足して遊ぶようになった。しばらくコンテンツのアウトプットは「楽しんでもらう」に終始していたが、イベントなどでユーザー同士や社会との接点が増え、現実世界でも認められるようになった。

 08年12月より誰でも動画の生中継ができる「ユーザー生放送」のサービスが始まると、「顔出しは危険」というアレルギーが徐々に溶けていった。マスクなしで踊ったり、イベントに出演したりすることへの抵抗がなくなり、ユーザー同士の現実世界での交流がさらに加速した。

 そしてニコ動は今、経済圏へと昇華させる革命に臨んでいる。著作権管理と金銭的対価に象徴される、うるさい商業コンテンツの世界にそっぽを向き、自分たちの世界を築いたニコ動ユーザー。一気に経済圏の方向へ振れば、総スカンを食らいかねない。じわじわと水が染み入るような絶妙な加減を要する。今のところ、「文化革命」はうまくいっているように見える。

 ボカロPや歌い手などがプロデビューを果たすと動画には「おめでとー」「買ったよー」という賛辞のコメントがあふれる。超パーティーなどのライブイベントのチケットは毎回完売し、ライブの生中継を有料で視聴するユーザーも数万人規模に増えた。

 そんな中で導入された奨励プログラムは、ネットのコンテンツで正当に稼ぐことが当たり前となり、むしろたたえられる文化へと変革する契機となるかもしれない。著作者への対価の支払い方という文化も大きく変わりそうだ。

■楽曲のダウンロード数に応じてドワンゴが著作権料で還元

 奨励プログラムは、ユーザーから広く薄く得たプレミアム会員からの課金を再配分するという、いわば「税金」のような考え方。CDの価格に著作権料が転嫁されている商業コンテンツとは一線を画す。再生する行為が報酬の上乗せとなるため、無料の視聴ユーザーも著作者に貢献できる。

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