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「ソーシャル革命」の裏側

「ニコ動」世界へ ネット文化変え、稼げる経済圏を
ネット上の才能を現実世界に解放~ドワンゴの挑戦(3)

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2012/5/22 15:06
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 日本の動画配信サイト「ニコニコ動画(ニコ動)」が今夏から海外展開を本格化させる。海外への出口を作ると同時に、国内では「稼げる仕組み」の構築も急ぐ。「役に立たないことを全力で楽しむ」「もうけることを嫌う」といったネット文化への挑戦。日本に貢献できる独自の「ニコ動経済圏」を確立すべく、コンテンツ革命の歩を進める。

 ニコ動の生みの親、ドワンゴの川上量生(のぶお)会長は、ニコ動にとって重要なプロジェクトに限って、いつも「ひっそり」とやろうとする。リリースを出し、記者会見で「大きな収益を狙う」とぶち上げるのは性に合わない。海外展開も、ひっそりと始めるつもりだ。

ニコ動発のコンテンツ文化は世界に広がっている(ユーチューブから)
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ニコ動発のコンテンツ文化は世界に広がっている(ユーチューブから)

 「まだニコ動はまったく日本のためになってない。でも、予感みたいなものは感じている。ユーザーを見てて、こいつらと一緒だったら世界で勝負できると思ってる」――。こう語る川上会長はこの夏、ニコ動の海外進出を本格化させようと画策している。今夏にもニコ動を中国語を始めとする多言語に順次、対応させる見込みで、まずは日本のコンテンツ文化の発信基地として世界的な認知度を高める計画だ。

 初音ミクなどの「ボカロ曲」や、それらを「歌ってみた」「踊ってみた」動画といったニコ動の人気コンテンツは、動画配信サイトの「YouTube(ユーチューブ)」を通じて世界にも浸透しつつある。ニコ動は「本家」として海外ユーザーでも親しみやすくすると同時に、海外からの投稿も受け付け、日本のコンテンツ文化を基軸とした交流も促す。この5月にはニコ動のロゴとサイト名を日本語から「niconico」へ変えるなど、着々と準備も進めている。

■「ニコ動経済圏」への布石

 ニコ動はこれまで、2007年10月に台湾版、08年7月にドイツ版とスペイン版(11年12月に閉鎖)、11年4月に英語版サイトを別途、開設。海外展開に向けた試行を重ねていた。「これまでの海外サイトは実験なので、まあ無視してほしいというのが本音です」(川上会長)。試行を経て新たに始める多言語化では、動画の説明を各国語に自動翻訳するなどの新機能が検討されている。

「ニコニコ超会議」でダンスを踊る数百人のユーザー。曲も振り付けもユーザーによるオリジナルだ
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「ニコニコ超会議」でダンスを踊る数百人のユーザー。曲も振り付けもユーザーによるオリジナルだ

 「最終的にはニコ動でコンテンツを作るだけで、ある程度の生活がまかなえるような、そういう経済圏を作りたい」。こう明言する川上会長は、「稼げる場所を才能あふれるネットの住民に与える」というテーマのもと、ユーザーがコンテンツを自給自足する「コンテンツ革命」の黒子として、彼ら彼女らの創作活動を後押ししてきた(記事下リンクの過去記事を参照)。

 民主党の小沢一郎元代表の単独会見など「公式コンテンツ」も話題になるが、コンテンツ生産の主役はあくまで一般ユーザー。クリエーターとして稼げる独自の経済圏を確立することがゴールで、海外展開はその間口を広げる布石と見てよい。先行して国内でもこの4月、経済圏確立に向けた布石を打った。独自経済圏の中でお金を環流させる「クリエイター奨励プログラム」である。

■国内では「年額4億円」を還元

 名古屋市の専門学校でコンピュータ・グラフィクス(CG)の制作技術を学ぶ上松友規さん(22)は4月初め、ニコ動の画面を見て驚いた。上松さんが投稿した動画の4月分の報酬として、2万円ほどが銀行口座に振り込まれることが分かったからだ。上松さんが手にしたのはニコ動が新たに始めたクリエイター奨励プログラムの報酬。同プログラムは動画の人気度に応じて投稿者に報酬を与える試みで、報酬の原資はドワンゴが用意した「年額4億円」だ。

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