名張毒ぶどう酒事件:奥西死刑囚の再審開始を認めず
毎日新聞 2012年05月25日 10時02分(最終更新 05月25日 11時59分)
差し戻し審では、専門家が再製造したニッカリンTを使った鑑定が行われ、この農薬に特有の不純物が検出された。この不純物は事件当時、現場に残ったぶどう酒からは検出されておらず、弁護団は「混入農薬はニッカリンTではなく、自白は信用できない」と主張。検察側は「検出されない場合もある」などと争っていた。
鑑定の評価に関し高裁2部は、事件から当時の鑑定まで1日以上たっていたことから「(この間に)加水分解で不純物の元になる物質がなくなったと考えることが可能」と指摘。「自白は根幹部分において十分信用できる。奥西死刑囚以外にぶどう酒に農薬を混入しえた者はいない」と結論付けた。差し戻し前の2部決定の判断をほぼ踏襲した形だ。
奥西死刑囚は三重県警の取り調べ段階で「事件前夜、自宅にあった瓶入りのニッカリンTを竹筒に移した」などと自白。しかし瓶も竹筒も見つからないなど物証に乏しく、自白を主な根拠に死刑判決が確定した。起訴直前に否認に転じていた奥西死刑囚は73年以降、再審請求を7回繰り返してきた。