西部邁氏「反原発ムードは再考せよ」

西部邁氏が、本日(5月23日)の毎日新聞「異論反論」欄に登場。

そのなかで西部氏は、国連原子放射線影響科学委員会の委員長の発言が日本のメディアでは報道されていないことにふれて、「要するに、『さあ大変』に固着してしまった集団心理、そして『さあ騒ごう』に固定されてしまった集団行動」「反原発のムードや原発の稼動停止も再考されなければならない」と主張している。

毎日新聞「異論反論」2012年5月23日付

毎日新聞「異論反論」2012年5月23日付

【異論反論】異説に耳をふさぐな/報道されない「福島に健康被害なし」

[毎日新聞 2012/05/23]

寄稿 西部 邁

 国連原子放射線影響科学委員会(UNSCEAR)の委員長がこの1月、福島第1原発事故についての重大な発表をした。ロイター通信が伝えている。ネット上には動画もあり、日本のメディアは報道していないようだが、私の場合、稲恭宏博士からの私信でそれを知ったのである。
 この発表によれば、「福島」において現在も今後も、健康被害が出るとは考えがたいという。私も素人判断でそう考えていたので、この発表に驚きはない。それが本当だとすると、ミリシーベルトやらをめぐるこの1年間余りの騒ぎは、一体、何だったのか。
 いわんや、「東北ガンバレ」と叫び、「絆」に流行語大賞を与えながら、被災地の瓦礫は放射能恐怖ゆえに引き受けない、という日本各地の反応は、卑劣であったのみならず、愚劣であったということになる。ひょっとして、政府もメディアも、自分の空騒ぎを恥じて、発表を封殺したのか、と思う者もいるであろう。
 この発表が正しいなどと主張しているのではない。チェルノブイリでの被轡は、作業員の放射線防護が不十分だったことによるという。そしてこの地域の甲状腺がんについては、政府の警告がなかったせいで母親たちが大量の放射性ヨウ素131が含まれたミルクを子供に飲ませてしまったことによるという。「福島」ではそんなことは皆無だったので、健康への被害は心配しなくてよいとのことである。
 これは重大な情報なんかではない、といえるだろうか。「瓦礫」の処理は1年た経っても1、2割しか進んでいない。「福島」の産品に対する購入拒否も続いている。それらは現政権の不始末ではあるが、これとて、放射能被害の虚報かもしれないものに邪魔されてのことである。

固着した集団心理、情報の注目妨げた

 この重大な発表がなおざりにされているのはなぜか。そこに情報の操作があったとは考えにくい。そんな企みを実行できるほどには、今のメディアも一枚岩ではないのである。要するに、「さあ大変」に固着してしまった集団心理、そして「さあ騒こう」に固定されてしまった集団行動、それがこの発表への注目を妨げたのに違いない。
 そうだとすると事はさらに重大だ。日本人のオツムが情報を操作したのではなく、情報がこのオツムを静かに通過していったのである。このことにもし気がつけば、反原発のムードと原発の稼働停止も再考されなければならない。「反核」は世界的な動きではある。しかしこの引き金となったのは「福島」であり、とくにこの事後処理の遅延である。UNSCEARの発表を検討する責任は日本にこそあるというべきだ。
 この発表を信じうとはいわない。必要なのは頭をつかい耳と口を開くことだ。そういう大人になるための絶好の機会である。異説にたいしての「見ざる言わざる聞かざる」の三猿はやめようではないか。

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西部邁さんの意見への賛否をお寄せください。紙面に掲載することもあります。
〒100-8051 毎日新聞「異論反論」係
tky.gakugei@mainichi.co.jp(添付ファイル不可)

見出しに「異説に耳をふさぐな」とたて、最後も「この発表を信じろとはいわない」などと言っているが、各地に広がる「原発なくせ!」のデモは「『さあ騒ごう』に固定されてしまった集団行動」であり、「見ざる言わざる聞かざる」の子どもがやってることだと言っているのだから、これほどひどい攻撃はないと思う。

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