2009年8月10日
件名: ハイパースペクトルカメラによるPCB含有オイル可視化に関する報告書
文責: 佐鳥新(北海道工業大学・教授)
1.PCB含有オイルの漏洩可視化の必要性について
現在の法律ではPCBの保管及び解体作業に際して、PCB含有オイルの容器からの漏洩の検査は、「PCB廃棄物収集・運搬ガイドライン」の「2.2.2 漏洩の点検、漏洩防止措置」における「表2.1収集・運搬中等に漏洩があった場合の対応方法」によれば「目視にてPCB廃棄物の漏洩状態を確認検査」が義務付けられている。
しかしながら、検査の現場では目視による判別は非常に困難、もしくは不可能であることから、計測器を用いた客観的な判別方法の必要性が現場サイドから強く求められている。
そこで、今回はハイパースペクトルカメラという2次元分光スペクトル画像を取得できる計測器を用いてPCB含有オイルの漏洩の可視化を試みた。
2.可視化の原理と計測方法
「環境問題を考える会」代表の森繁樹氏によれば、PCB含有オイルは紫外線によって蛍光を発することが経験的に分かっている。そこで2009年8月7日に北海道工業大学に保管されている蛍光灯安定器コンデンサーをハイパースペクトルカメラ(型式HSC1701)で測定することにより、PCB含有オイルの漏洩の可視化実験を行った。計測の原理を図1に示す。

図1 PCB含有オイルの漏洩の可視化の原理
3.実験結果
蛍光灯安定器コンデンサーの容器に紫外線(ブラックライト)を照射した時に、漏洩オイルの発する蛍光スペクトルの計測結果を図2に示す。波長460nm〜480nmの間に顕著な蛍光が現れていることが分かる。

図2 漏洩オイルの発する蛍光スペクトルの計測結果

図3 コンデンサー容器 (左:デジカメ写真 右:ハイパースペクトルによる可視化)
図3においてデジカメ写真(通常の目視による判別)とハイパースペクトルによる測定結果を見比べるとわかると分かるように、目視検査では判別できないPCB含有オイルの漏洩がハイパースペクトルカメラによる分光画像解析によって可視化及び等級化できることが分かる。
4.考察及びまとめ
(1)紫外線励起光源を用いた測定により、PCB含有オイルから波長460nm〜480nmの間に顕著な蛍光が現れることが分かった。
(2)励起光源の強度やセンサー感度に依存しない物理量を次式で定義することにより、PCB含有オイルの漏洩を定量化することが可能といえる。
蛍光強度が大きい場合、つまり漏洩量が多い場合にはHSPが高い数値を示す。この評価式を用いて図3の漏洩箇所別に数値化を試みた。数値化した箇所の拡大図(460nm〜480nmの平均スペクトル強度図)を図4に、評価結果を図5に示す。

図4 図3に対応する460nm〜480nmの平均スペクトル強度図(256階調)

図5 PCB含有オイル漏洩の数値化の事例
件名: ハイパースペクトルカメラによるPCB含有オイル可視化に関する報告書
文責: 佐鳥新(北海道工業大学・教授)
1.PCB含有オイルの漏洩可視化の必要性について
現在の法律ではPCBの保管及び解体作業に際して、PCB含有オイルの容器からの漏洩の検査は、「PCB廃棄物収集・運搬ガイドライン」の「2.2.2 漏洩の点検、漏洩防止措置」における「表2.1収集・運搬中等に漏洩があった場合の対応方法」によれば「目視にてPCB廃棄物の漏洩状態を確認検査」が義務付けられている。
しかしながら、検査の現場では目視による判別は非常に困難、もしくは不可能であることから、計測器を用いた客観的な判別方法の必要性が現場サイドから強く求められている。
そこで、今回はハイパースペクトルカメラという2次元分光スペクトル画像を取得できる計測器を用いてPCB含有オイルの漏洩の可視化を試みた。
2.可視化の原理と計測方法
「環境問題を考える会」代表の森繁樹氏によれば、PCB含有オイルは紫外線によって蛍光を発することが経験的に分かっている。そこで2009年8月7日に北海道工業大学に保管されている蛍光灯安定器コンデンサーをハイパースペクトルカメラ(型式HSC1701)で測定することにより、PCB含有オイルの漏洩の可視化実験を行った。計測の原理を図1に示す。
図1 PCB含有オイルの漏洩の可視化の原理
3.実験結果
蛍光灯安定器コンデンサーの容器に紫外線(ブラックライト)を照射した時に、漏洩オイルの発する蛍光スペクトルの計測結果を図2に示す。波長460nm〜480nmの間に顕著な蛍光が現れていることが分かる。
図2 漏洩オイルの発する蛍光スペクトルの計測結果
図3 コンデンサー容器 (左:デジカメ写真 右:ハイパースペクトルによる可視化)
図3においてデジカメ写真(通常の目視による判別)とハイパースペクトルによる測定結果を見比べるとわかると分かるように、目視検査では判別できないPCB含有オイルの漏洩がハイパースペクトルカメラによる分光画像解析によって可視化及び等級化できることが分かる。
4.考察及びまとめ
(1)紫外線励起光源を用いた測定により、PCB含有オイルから波長460nm〜480nmの間に顕著な蛍光が現れることが分かった。
(2)励起光源の強度やセンサー感度に依存しない物理量を次式で定義することにより、PCB含有オイルの漏洩を定量化することが可能といえる。
蛍光強度が大きい場合、つまり漏洩量が多い場合にはHSPが高い数値を示す。この評価式を用いて図3の漏洩箇所別に数値化を試みた。数値化した箇所の拡大図(460nm〜480nmの平均スペクトル強度図)を図4に、評価結果を図5に示す。
図4 図3に対応する460nm〜480nmの平均スペクトル強度図(256階調)
図5 PCB含有オイル漏洩の数値化の事例