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【放送芸能】

NHK、私いなくても揺るがず 数土経営委員長辞任

 NHK経営委員会の数土(すど)文夫委員長(JFEホールディングス相談役)が二十四日、緊急記者会見を開き、経営委員長を辞任し、委員も辞職する意向を表明した。内定していた東京電力社外取締役との兼職が問題視される中で、東電再生に専念することを選択。会見では決断に至るまでの経緯を語った。 (石原真樹)

 −辞任を決めた理由は。

 「この二日間、経営委員に電話や直接会って話を聞いた。そこで、私が昨年四月に就任してからこの一年間で意識改革ができており、NHKの今後の経営課題が共有化され明確になっていることを再確認できた」

 「もし私がいなくても、経営課題(への取り組み)が揺らぐことはないだろう。一方で、東電は国難だという気持ちはますます高まっていて、東電がもし何かの条件で止まることになったら悲惨な状況になる。それで決断した」

 −委員全員に話を聞いたのか。

 「最善を尽くしたが、連絡が取れなかった人もいる。人数は言わない」

 −東電の社外取締役とNHKの経営委員長を兼職することへの批判が起きたことが辞任の理由なのか。

 「ノー(違う)。決断は私の信念。NHKには放送法で報道の自主自律、不偏不党が保証され、経営委レベルでは監査委員会、執行部については内部統制があり、完璧な仕組みが重層的にできている。(兼職が)報道に影響を及ぼすという懸念を抱いている人(NHK職員)はいないと信頼している」

 −兼職はできないと思ったのか。

 「それはない。端的には、兼職しなくても大丈夫だということ。経営委へのヒアリングでそう思った」

 −視聴者へどういう配慮をしたのか。

 「いろいろな配慮の仕方がある。ここでは申し上げられない。いろいろなコメントが(NHKに)届いているとの報告は受けた」

 −視聴者の理解は得られたと思うか。

 「経営者はいろいろなステークホルダー(利害関係者)に配慮しなければいけない。すべてのステークホルダーを満足させるというのは難しい」

 −松本正之NHK会長には伝えたのか。

 「総務省の担当者に辞任を伝えた直後に報告した。これは私個人の問題であり、コメントは求めていないし、されていない」

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◆Q&A

 数土文夫委員長の辞任劇で混乱の舞台となったNHK経営委員会とは、そもそもどのような組織なのか。そして今回、何が問題となっていたのか。

 Q NHKの番組はよく見るけど、「経営委員会」は視聴者にはなじみがない。

 A 受信料収入による番組制作の責任を持つのは、松本正之会長をトップとする執行部。経営委は「最高意思決定機関」で、執行部の上に立って経営方針や予算の議決権、会長の任免権を持つ。放送法に基づき設置されている。

 Q 上に立つ機関は、お飾り的なイメージがつきまとうけど。

 A 番組制作費着服の不祥事に端を発して、受信料不払いが多発するなど、NHKへの見方が厳しくなったこともあり、二〇〇八年四月施行の改正放送法で執行部に対する経営委の監督権限が強化された。予算執行はしないが、経営の大枠を決める。

 Q どんなメンバー?

 A 大学教授、企業経営者、作家、弁護士など、社会的に重責を担う十二人で構成されていて、衆参両院の同意を経て首相が任命。任期は三年。委員は公共の福祉に関し公正な判断をするよう求められている。委員長は互選で決める。歴代の委員長を見ると、大企業の重役が目立つ。

 Q 今回、東電の社外取締役との兼職が問題になったけど。

 A 非常勤の委員長の兼職は放送法で禁じられていないので、数土氏も「問題ない」との立場だった。ただ、原発事故を起こした東電は、報道機関であるNHKの大きな取材対象。取材する側の人間が取材される側にも身を置くのはおかしいし、そうなったらNHK報道の中立・公平性が揺らぐおそれがある。経営委が番組編成に干渉できず、社外取締役も監督に専念するので、兼職に支障はないという数土氏の説明は説得力がなかった。 (山岸利行)

 

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