社説:数土委員長辞任 公正な報道のNHKを
毎日新聞 2012年05月25日 02時30分
東京電力の社外取締役に就任することが内定しているNHKの数土(すど)文夫経営委員長(JFEホールディングス相談役)が24日、経営委員長を速やかに辞任すると発表した。
報道機関の経営トップが、きわめて重要な取材対象である東電の役員に就くことに批判が多かった。それを受けての辞任だ。報道や言論の自由を大切に思う国民世論の主張が通った結果になった。数土氏の判断は妥当で、今後は「新生東電」の経営に全力を尽くしてもらいたい。
数土氏が経営委員長と東電役員を兼職する方針であることが14日に発表されて以来、メディアや市民団体、有識者、NHKの労組などから批判が相次いだ。私たちも、数土氏の兼職は問題が多く、考え直すべきだと主張した。
22日には経営委員会が開かれ、数土氏が放送内容は影響を受けないと説明したが、経営委員からは疑問視する声があった。また、NHKには兼職に反対する視聴者の意見が多数寄せられ、23日昼までで約400件にのぼった。その中には、受信料の支払い拒否など強硬なものもあった。数土氏は次の経営委員会まで結論を先送りする意向だったが、批判の声の高まりに応えざるをえなくなったのだろう。
放送法ではNHKの経営委員は個別の番組に関与することを禁じている。また、数土氏が東電役員を兼職することについて、野田政権の一部閣僚は「問題なし」としていた。