NHK経営委員会の数土文夫委員長(JFEホールディングス相談役)は24日、都内で緊急記者会見し、NHK経営委員と経営委員長を辞任し、就任が内定している東京電力の社外取締役に専念すると表明した。数土氏がNHK経営委員長と東電社外取締役を兼職することには、放送の中立性確保の観点から批判が強まっていた。数土氏は辞任の判断で批判に「配慮した」と述べる一方、「出処進退は自分で決めた」と強調した。
数土氏は近く、野田佳彦首相に正式に辞表を提出する。数土氏は昨年4月に経営委員と経営委員長に就任した。小丸成洋前委員長(福山通運社長)に続いて、NHK経営委員会のトップが任期途中で辞任する異例の事態となる。
NHKの経営トップが重要な取材対象となる東電の経営に関与することに対しては、「報道現場が萎縮しかねない」と自民党などから批判が相次いだ。これに対し数土氏は、放送法上は非常勤の経営委員は兼職が可能なことなどから、今月22日の記者会見で「兼職は問題ない」との立場を示していた。
数土氏は24日の会見で、大部分の経営委員と同日までに意見交換し、兼職に対する賛否の両論があったと説明。最終的に同日昼に辞任を決断し、総務省に辞意を伝えたと語った。
数土氏は東電の社外取締役に専念する決断をした理由について、「(東電の再建問題は)国難だとの思いが高まってきた。東電が再出発につまずけば、(日本経済が)破滅的な状況になる」と強調した。一方、NHKの経営委員長を任期途中で辞めることには「NHKの経営課題で(他の委員と)共通認識ができている」と述べ、支障はないとの認識を示した。
[時事通信社]