在日韓国人信用組合協会(韓信協、権東鉉会長)が、返済期限が迫った本国支援金156億円の支援延長を求めていた問題で、韓国政府は正式に支援延長を決定した。延長期間は2016年8月末までの5年間で、再延長は認められない。韓信協はこれを受け、支援期間内に会員7組合の経営健全化基盤を構築する取り組みを本格化する方針だ。
韓信協は、日本の長期にわたる景気低迷による経営環境悪化に伴い、05年8月に本国から156億円の支援金の提供を受けた。厳しい経営環境を克服するための支援金であり、韓信協は、この支援金の運用益を活用、会員組合の健全経営基盤を構築するための基金を創設、経営状態が好ましくない一部会員組合を支援してきた。
しかし、支援金の返済時期が到来した。今年8月に半額、来年8月に残り全額を返済することになっていたが、日本経済の景気低迷、東日本大震災なども重なり、経営環境が大変厳しい状況にあることから返済の延長を申し出ていた。
韓国政府内には異論もあったようだが、最終的に支援期間を5年間延長することを決めた。ただし、今後再延長をしないことを条件につけ、韓信協会長及び7組合理事長の連名で韓国銀行と覚書を交わした。民団中央本部団長と在日韓国商工会議所会長の連名付きだ。
韓信協会員組合は、いわば5年間の猶予期間を得て、今後は韓国政府の支援に頼らないで、健全な経営基盤構築を迫られることになった。
韓信協関係者は、「本国支援金は長い間、組合経営の大変な助けになった。だが、今回が最後となるだろう。これからは自助努力で健全化を図らなければならない。本国政府もその努力を前提に支援を延長してくれたと思う」と語った。
韓信協では、05年8月から16年8月までの11年間に本国支援金による運用益合計が24億円の巨額になることを重く受け止め、同期間内に会員組合の抜本的な経営健全化を模索する。加盟組合の合併・統合もその選択肢であり、先の総会でも年内に大筋のスキームを確定する方針を決めている。
権東鉉・韓信協会長は、今回の支援金返済延長について、「支援期間の再延長をしないことを約束して実現した。会員組合の経営基盤強化のためには、自助努力を通じての自己資本(出資金)の増強が必要だが、経営状況が好ましくない一部会員組合は単体としての自助努力に限界がある。全会員組合を対象に経営基盤強化策を多角的に検討し、積極的に進めていく」と語った。
◆本国支援金とは
在日信用組合向けの本国支援金の歴史は今年で50年になる。1961年2月から計15回にわたり総額400億円が無利子で支援され、02年2月までに全額返済された。
今回支援が延長された156億円は、05年8月に5年据え置き2年均等分割返済条件の支援金。今後の返済条件は1年据え置き、12年8月末から16年8月末までの5年均等分割返済。来年から31億余円ずつ返済することになる。
韓信協はこの間、本国支援金156億円の運用益(国債や定期預金)で、会員組合を支援してきた。今年8月末までの6年間の運用益は18億2700万円。うち10億4000万円を基金として積み立て、経営悪化組合に対して緊急支援を実施。今回の支援再延長に伴い、6億3500万円の追加運用益が生じる。運用益合計は24億6200万円に達する見込み。