あれもこれも放射能のせい
利根川・江戸川水系の浄水場で、相次いで有害物質のホルムアルデヒドが検出されている。原因特定が遅れる中、ネット上では「放射能の影響」とする説が拡散。放射能を過度に恐れる人たちが流した「デマ」として非難されている。
デマにみえるが……
ホルムアルデヒドが最初に検出されたのは、17日、埼玉県の浄水場だった。その後、千葉、群馬、東京などの浄水場でも相次いで検出され、千葉県野田市や柏市などでは断水も行われた。
上流域の群馬県でもホルムアルデヒドが確認されていることから、汚染源は同県内にあるものと疑われているが、21日現在、特定されていない。そんな中、Twitterで拡散されているのが、下記の情報だ。
【拡散希望】最近、関東の水道の水でホルムアルデヒド検出が相次いでいます。これは放射能の影響で何らかの自然環境変化により発生したものと思われます。他にも未検出の有害物質が放射能の影響で含まれている可能性があります。水道の水を飲む際には浄水器をつけるなど対策をした方がいいと思います。
原因はセシウム除染?
ホルムアルデヒド検出を「放射能の影響」とする説には根拠が薄いため、「デマ」と断じる声が多いが、実は無視できない論文が米国で発表されている。
セシウムの除去にホルムアルデヒド樹脂が効果を発揮する、というものだ。米の「SAVANNAH RIVER NATIONAL LAVOLATORY」が2007年に公表されたもの。
利根川水系の上流域で除染に使われたホルムアルデヒドが流れ込んだのでは、との推測がささやかれている。
有力視される矢木沢ダムの放流説
これとは別に、矢木沢ダムの放流を原因とする説も、一定の説得力を持つ。福島第1原発事故により、首都圏の水源である群馬県にも大量の放射性物質が降りそそいだ。放射性物質は雨水などに運ばれて低地に集まる傾向がある。
利根川の水源である矢木沢ダム(奥利根湖)では、今年1月に発表された環境省の調査データによると、湖底の泥から2,900ベクレル/kgのセシウムが検出されている。
湖水からは検出されていないが、大量放流などを行えば、湖底の泥がまき上げられ、高濃度のセシウムが水に混ざる可能性が高い。
セシウム134・137はβ線とγ線を放出する。このうちγ線には有機塩素化合物を崩壊させ、クロロホルムとアルデヒドを生成する作用がある、との研究結果を財団法人・高度情報科学技術研究機構が発表している。
実際、ホルムアルデヒドが検出された浄水場は塩素を使用している施設のみで、浄水にオゾンを使用している施設では検出されていない。18日から矢木沢ダムが大量放流を行っていたため、この説を有力とみる人も多い。
急がれる原因究明
ホルムアルデヒドは塩素と有機物質が反応することでも発生する。水中のプランクトンと反応して、生成されることもある。
ダムの放流が原因だとしても、まき上げられた泥などに含まれる有機物が塩素と反応した可能性もある。いずれにしろ放射線説が一定の説得力を持つ中、望まれるのはこういった説を一掃するだけの「証拠」を持つ原因究明だ。
◆togetter
http://togetter.com/li/306649◆矢木沢ダム
http://www.water.go.jp/kanto/numata/03_yagisawa/yagisawa.html