2012年2月13日03時00分
「小学生社長」がつくったカードゲームが人気だ。すでに1万部以上が売れ、スマートフォン用ソフトの開発にも乗り出す。考案したのは、神奈川県在住の小学6年生米山維斗(ゆいと)君(12)。昨夏、ゲーム企画会社を立ち上げ、社長に就いている。12日に東京都内で記者会見し、抱負を語った。
ゲームは「ケミストリークエスト」(1500円)。元素記号を表すカードを化学結合のように組み合わせて遊ぶ。
水素、炭素、酸素、窒素の元素4種類を示すカード48枚を用意。対戦する2人が持ち札を各3枚並べ、分子ができる組み合わせのカードを取り合う。例えば、水素2枚と酸素1枚は水、水素3枚と窒素1枚はアンモニア。最後にカードが多い方が勝ちだ。
原型は3年前にできた。小3だった米山君が、「友達と遊べるカードゲームがほしい」と、パソコンで自作した。化学式を知らない友だちも「水素と酸素で水ができるのか」などと言いながら楽しんだという。
昨年10月に販売し、すでに約1万6千部が作られた。販売する幻冬舎エデュケーションの担当者は「『1万部でヒット商品』とされるカードゲーム業界でこの人気はすごい。身近な物体の成り立ちを遊びで学べる点が、子どもに受けていると思う」と話す。
米山君は、コンピューター関連会社に勤める父の康さん(47)の長男で、母と弟と4人家族。昨年7月、ゲームの商品化に合わせて「ケミストリー・クエスト株式会社」を自宅に設立。康さんを代表取締役に、自分を社長として登記した。資本金150万円。今のところ、社員は家族だけだ。
康さんは「会社組織にした方がゲームの普及に役立つと考えた。権利保護の目的もある」と話している。
米山君は会見で、国立大付属中学の入試に合格したことを明かし、「受験勉強が終わったので、本格的にゲーム開発に力を入れることができます」と語った。
自作のゲームについて、「世の中の物質が100個ほどの元素の結合でできていることを知り、とても感動しました。それを伝えたかった」。幼稚園児のころから地球の成り立ちに興味を持ち、児童向けの科学書や百科事典を愛読してきた。小2で高校の参考書を読んでいたという。
「周期表を語呂合わせで覚えるなど、知識を詰め込むから理科嫌いが増える。身近な物の成り立ちを知るだけで、理科は楽しくなります」
米山君は「元素記号は世界共通。外国でも楽しんでもらえると思う」と、将来の海外展開も思い描く。ただ、将来は社長業でなく、研究者になるのが目標だという。
「化学に限らず、多くの分野の複合的な知識を身につけて、新しい発見をしたい。それを多くの人に伝えるのが夢です」(岡雄一郎)