日本では約970万台、グローバルでは3900万台になる世界的なベストセラーカー、トヨタ『カローラ』がフルモデルチェンジし、11代目に進化した。
【池原照雄の単眼複眼】「終のマイカー」へ…11代目 カローラ
◆「コレカラ」でリタイア世代にアピール
トヨタ自動車の『カローラ』が6年ぶりに全面改良して発売された。日本のモータリゼーションの原動力となった1966(昭和41)年の初代から11代を数える新型車は、初めて全長を短くするなど、安全・環境性能とともに使いやすさの追求にも力点を置いている。
すべてで高い満足度をめざす「80点主義+α」で登場した初代を髣髴させるスペックであり、より「カローラらしく」なった。このようなセダンは、実は現状では国内にはあまりなく、セダンにこだわりをもつ層が厚い団塊の世代から支持が得られそうな予感がする。
新型車の宣伝コピーは「これからを生きる人のコレカラ カローラ」。退職したこれからもカーライフを楽しむぞという、リタイア世代を強く意識している。戦後のベビーブームである1947(昭和22)年から49年にかけて生まれた団塊の世代は、サラリーマンとしてはすでにリタイアあるいは定年延長期にある。
◆最小回転半径は『ベルタ』並み
この世代に属す、ある先輩からマイカーについてこんな話を聞いた。「こんどの新車も10年ほど乗るとすれば、次の買い換え時は70代の半ば。もう運転は止めるかもしれないね」。つまり、こんどの新車購入が最後になる可能性が高いというわけだ。「終の棲家」ならぬ「終のマイカー」としてクルマを選ぶという、ある種の緊張感が伝わってきた。
筆者もそう離れた世代ではないので、気持ちはよく分かる。常に戦後の消費をリードしてきた団塊世代による「最後のクルマ選び」は、自動車業界には大きなビジネス機会であり、思わぬヒットモデルが生まれるかもしれない。
11代目カローラが初代を思い起こさせるのは、開発責任者の藤田博也チーフエンジニアが「もう一度原点に立ち返った」というのだから、当然かもしれない。藤田氏によるカローラの原点とは「大人4人が安全・安心で、快適に長距離をストレスなく移動できる最小のクルマ」となる。
セダンの『カローラアクシオ』で、全長は前モデルより5cm短い4.36mとし、最小回転半径は0.2m縮小の4.9mになった。旧『ヴィッツ』ベースで、トヨタの最小セダンである『ベルタ』と比較すると、全長は6cm長いだけで、回転半径は同じだ(ベルタの一部車種を除く)。新型カローラが、いかに取り回し性を改良したたかがうかがえる。
◆「終のマイカー」の候補に
フロントガラスを左右にラウンドさせるなどで視界も広めた。安全装備では、サイド及びカーテンレールエアバッグやVSC(横滑り防止装置)、TRC(トラクションコントロール)を全車に標準装備した。また燃費性能もアクシオはすべてJC08モードで20km/リットル以上を達成している。
欲をいえば、1.5リットルの2WD・CVT車のみにオプション設定しているアイドリングストップ装置を、今回復活した1.3リットルモデルに設定しても良かったのではないか。残念ながら試乗はこれからだが、静粛性など乗り心地の面でも、定評のある前モデルを、よもや下回ることはなかろうと期待している。
カローラの世界累計販売は、これまで3900万台と世界の全モデルのなかで断トツだ。05年に未踏の3000万台に達して以来、自己記録を更新し続けている。これだけのロングセラーとなると「多くの方に、カーライフのどこかで時代を共にしていただけるクルマ」(豊田章男社長)ということになる。
初代が登場した当時、団塊世代は高校生から大学生だった。これまでオーナーになった人は少なくないだろう。そうでない人にも、「終のマイカー」に選んでもらいたい…11代目からは、開発陣のそんな思いが伝わってくる。
トヨタ カムリ 新型、NASCARレーサーが完成
注目ニュース
歴代カローラがモデルチェンジを繰り返すたびに大きく、豪華になってきたのに対し、新型は大人4人ないし5人が安全、快適に長距離を移動できる最小のクルマを目指し、サイズダウンに踏み切っているのが特徴だ。
トヨタ『カローラ』がフルモデルチェンジした。このカローラからトヨタのクルマは変わるんだ!という意気込みでデザインしたという。
トヨタ自動車の専務役員で、かつて『カローラ』の開発にも携わっていた加藤光久氏は11日に発売した新型カローラについて「日本のカローラということを徹底的に、原点に帰ろうということでやってきたので、やっぱり...
新型車の生産を担当するセントラル自動車宮城工場で会見した豊田章男社長は、「カローラがロングセラーを続けているのは、いつの時代も時々の要望にしっかり応えてきたから」と指摘した。
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