「節電列島」となった去年の夏。
関西では「10パーセント」の節電が政府から要請されましたが、達成できた割合は、その半分の「5パーセント」。
目標には遠く及びませんでした。
一方、節電目標が「15パーセント」だった震災直後の関東。
こちらは「18パーセント」と目標をクリアしました。
その背景にあったのが・・・
「計画停電」です。
強制的に消えた、街の明かり。
東京電力は大停電を避けるために、およそ2週間に渡って1日数時間の停電措置をとりました。
<「計画停電」の経験者・女性>
「懐中電灯、ろうそくとかを用意しました。いやですね。地獄でしたね」
<夜に「計画停電」を経験した人・女性>
「これで凌いだので、ライトなんですけど、これ1個ずっと置いて。街灯も全部消えましたね。ほんとに真っ暗、ここだけ真っ暗っていう」
去年の関東と同じ15パーセントの節電が要請された、今年の関西。
この夏、「計画停電」なしで、15パーセントもクリアできるのでしょうか?
<「関西人」街の声・女性)
「節電あんまりしないです。暑がりだし、寒がりだし」
<「関西人」街の声・女性>
「子どもがいるので、部屋とか扇風機だけだと間に合わない時は、少し困るかなと思うんですけど。ギリギリまではがんばろうと思ってます」
<「関西人」街の声・女性>
「夏は死んでしまうなぁ、暑いと。かき氷の機械を買って来て、あれは体の中から冷やすから、練乳かけてシロップかけてあずき放り込んで」
(Q.毎日されてたんですか?)
「毎日」
(Q.エアコンつけなくてもいいですね?)
「そう、寒くなる、ろれつが回らなくなる」
大阪・ミナミ。
去年の夏は、なにわ名物が次々とその動きを止めました。
くいだおれ人形も・・・
<記者>
「太鼓を叩く手、止まりましたね。眉毛や口の動きも止まっています」
あの名物看板も・・・
<「カニ道楽」本店 大下政好店長>
「昨年は夏場に約2か月間、カニの看板を止めました。直接お客様に迷惑のかからないところで、最大限努力をして10パーセントぐらいは達成できたと思います」
(Q.あのカニ、そんなに電力使っているんですか?)
「結構使ってます」
「この夏も看板を止めることになるかもしれない」と話す「かに道楽」。
最も恐れているのは「計画停電」で、その場合、看板のみならず、カニそのものの鮮度に深刻な影響が出るといいます。
<「カニ道楽」 厨房担当>
「マイナス25度くらいの冷凍庫なんで、それぐらいじゃないと鮮度が落ちてくるんで」
(Q.急に電気が止まったら?)
「かなりきついですね」
飲食業界では、10パーセント以上の節電は、かなり難しいと言われています。
こうした中、目標の15パーセント達成に向け、CMで有名なあの企業が動き出しました!
<記者>
「大阪名物のこちらの豚まん!『電気があるとき』、食べられるといいますが、『電気がないとき』、食べられなくなるといいます」
1日14万個の豚まんを製造する食品メーカー「蓬莱」。
<「蓬莱」総務部 柏本政幸部長>
「ここは豚まんを1つずつひとつひとつ手で包んでいるところで、今日のお客様に渡す分を今日作ってる」
その製造工程では、フロアーの一部で照明を落とすなど、既に節電対策が取られていました。
もし、「計画停電」が行われると、店頭から豚まんがたちまち消えてしまうと言います。
<「蓬莱」総務部 柏本政幸部長>
「手で1個1個包んでるんですが、それを補助するためにコンベアーを使っているので、これが『計画停電』で止まると何も出来なくなる。昨日作ったものは売ってないので、営業方針を変えない限りは、店には一切並ばない」
さらに、もう一つの看板商品にも影響が・・・
<記者>
「『計画停電』になった場合、1日10万本売れるアイスキャンデーも生産できなくなるといいます」
「蓬莱」では、今年3月からアイスキャンデーの生産ラインについて平日の稼働を減らし、土日操業を始めました。
「計画停電」を避けるために、少しずつ節電を積み重ねているのです。
<環境エネルギー政策研究所 飯田哲也所長>
「これじゃあ停電じゃないですか、足りないじゃないですか。停電を起こさないといいながら結局停電じゃないですか。どうするんですか?」
夏の電力需給について、議論が続けている「エネルギー戦略会議」。
経済活動に大きな影響の出る「計画停電」を防ぐには、どうすればいいのでしょうか?
内閣府の「国家戦略会議」が調査した、この冬の関西の節電実績では、製造業では90パーセントが節電したと回答。
これに対し家庭では、54パーセントに留まっています。
つまり、節電の余地がまだ大きい家庭での対策がカギを握っているのです。
<環境エネルギー政策研究所 飯田哲也所長>
「あまり無理をすると熱中症みたいになってしまうので、あまりそこは無理をする必要も無くて、賢い省エネのやり方というのを、まずはしっかりと知っていただくことが一番重要だろうと思う」
では、実際に15パーセントもの電力を家庭で減らせるのか?
取材班は、千葉県の家庭を訪れました。
去年、「計画停電」を経験し、ちょうど15パーセントの電力削減に成功したといいます。
<林昌明さん(33)>
「一番大きかったと思うのは、エアコンを使わないことです。全くではなく、夜寝る前の1時間ぐらい使うように、あとは扇風機だけ」
(Q.そんなに違います?)
「全然違います。エアコンの10分の1の消費電力ということなので」
林さんの家庭で使用した、毎月ごとの電気量。
おととしの4月から9月までの月平均は396キロワットアワー。
これに対し去年は334キロワットアワーで、62キロワットアワー、ちょうど15パーセント分、削減出来たことになります。
そのうち、エアコンを使わないだけで(エアコンの消費電力800〜1,000ワット)15パーセントのうち、10パーセントも削減できたといいます。
あとの5パーセントは細かく節電です。
(1)待機電力を使わない(40.4キロワットアワー節電効果)
まず、待機電力を消費しないようにタップ式のコンセントを使用します。
これで40キロワットアワーの節電効果。
(2)テレビ画面は明るすぎないように設定(29.9キロワットアワー節電効果)
次にテレビの画面は、明るさを落とすだけで、ひと月およそ680円の節約になると言います。
(3)掃除機をかける時間の短縮(16.4キロワットアワー節電効果)
また、掃除機は消費電力が大きいため、なるべく箒を使いましょう。
(4)ゴーヤのカーテン(30%〜40%の熱をカット)
林さんは、去年からベランダでゴーヤを育てていて、今年の夏もゴーヤをカーテン代りにするつもりです。
さらに・・・
<奥さん>
「冷蔵庫の中身はあまり詰め込まないように置いた方が、冷蔵庫の冷やす効率がいいと聞いたので」
これだけでも、月1,000円以上も電気代が浮いたといいます。
消費電力の大きい電化製品は、実はエアコン以外にも沢山あります。
食器は手洗いに変えるなど、使用回数を減らせば・・・、
「節電15パーセン」は、十分可能な数字だと実感したということです。
しかし万が一、関西で「計画停電」が行われる場合、その備えとして何ができるのか?
去年の経験をもとに再現してもらいました。
<林昌明さん>
「電池で光るランタンは一番良かったと思う。電池は事前にストックしておけばよかったと思う。電池は品薄になるので」
当時は、ランタンやラジオが役に立ちました。
さらに、オール電化のマンションでは、ガスコンロが必需品。
夕食は、これを使って圧力鍋でご飯を炊くなどして、しのいだといいます。
節電を浸透させるために、何が必要なのか。
エネルギーの専門家は、持続的に節電を促す制度と態勢作りが不可欠だと指摘します。
<ユニバーサルエネルギー研究所 金田武司氏>
「今すぐ出来ること対処療法と、来年再来年、中長期的にやるべきことは、しっかり段通りを踏んで、ビジョンを地域ごとに描くこと。行政機関の努力と政策がない限り、みんなで強制的な節電を回避する方向には進まないと思う」
原発事故をきかっけに、日本のエネルギー政策が変わろうとする中、節電に対するひとりひとりの意識と自覚も大きく変える必要があります。
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