警告
この作品は<R-18>です。
18歳未満の方は
移動してください。
性欲が満たされると冷静になれた。俺はベッドに突っ伏した少女に声をかける。
「で、ルルは一体なにをしに来たんだ?」
はっと我に返ったようにルルはこちらを振り仰いだ。乱れた二つ括りの髪と精液を垂れ流したオマ○コが背徳感を刺激する。幼い顔立ちの所為で強引に犯したような印象を受けるからだ。
「そうだったわ。二回も気持ちよくしてあげたんだから、早く私のことを好き好き大好き超愛してるって言いなさい」
少女の口から発せられた言葉を聞いて欲望が減退する。あと最初に言っていた台詞と違う気がするのだが? しかしまあ、そんな些細なことはどうでもいい。重要視すべきはその台詞を言わせたい理由だ。
「その台詞を俺に言わせるとルルはなにか得するのか?」
「あんたが神様と約束を交わしたように私も神様とある約束をしたのよ」
ベッドの上に寝転がったままのルルと視線が重なる。見知らぬ男女が出会ってすぐセックスに及ぶという風俗のような体験をしたわけで、本来なら互いの節操無さを恥じるべきなのかもしれないが、眼前の少女は援助交際で一仕事終えた女子高生のように罪悪感を微塵も感じさせなかった。しかしその無頓着さに救われた部分は大きい。もしルルが願いを叶えるために無理強いされていたとしたら、どういう事情があるにせよ俺は激しく落ち込んでいただろう。あと本当にどうでもいい話だが「お前」から「あんた」に昇格していたな。
閑話休題。
はてさて一体どういう約束なのだろう? 俺は無難な探りから切り出していく。
「ともかく俺に好き好きと言わせればルルの願い事を叶えてやるという感じなんだよな?」
「そういうことになるわね」
あっさりと肯定された。でもそれっておかしくないか?
好きで好きでその子のことしか考えられなくなるような可愛い女の子を紹介してくれって頼んだはずなんだが、どういうわけか強制的(二回も射精しておいてなんだが)に好きと言わせられそうな展開になっている。どう考えても正攻法で願いを叶えてくれたわけじゃないし、なにより他者の条件と抱き合わせにされたことも不愉快だ。
「断固拒否するぞ。俺の願い事が適当に扱われ過ぎているからな」
「詐欺よ詐欺っ! 奉仕させるだけさせといて最低だわ」
金髪少女は身体を起こして口をへの字に曲げた。
「いやいやルルも楽しんでたじゃないか! フェラチオだけで何回もイかせたような言い方をするなよ」
なんやかんやで俺も頑張っていたはずなのだ。というか問題はそこじゃないな。
「ともかく納得できんぞ。俺にだってちゃんとした拘りがあるんだよ。ルルに協力したい気持ちはあるんだが、それを蔑ろにされたら堪らないからな」
あのときは丸っきり信じてなかったので半分くらい後付けだが仕方ない。この機会を逃したら理想の女子と出会える確率なんて皆無だからな。
「むー、なにか打開策はないの?」
どうやらルルも話を進展させたいらしい。俺は腕を組んで思考する。全裸の金髪少女も俺の仕種を真似て頭を使っている演技を開始した。
好みの可愛い女の子を紹介してほしいという願い事の代替案。
さて、どうしたものだろう? いや、よく考えればそれほど難しい問題ではない。要するに俺は好みの可愛い女の子と付き合いたいわけだ。ぶっちゃければ可愛い彼女とエッチを含めて毎日楽しく過ごしたい。つまり十代後半の男子が誰でも抱くような妄想を実現させたいだけなのだ。
「あのさ、こういうのはどうだろう。同じ高校に通うクラスメイトの女子と俺の仲を取り持ってくれないか? そうしたら俺もルルの頼みを聞き入れて好きだろうと愛してるだろうと何回でも言ってやる。都合のいい話だとわかっているんだが駄目か?」
「それって恋のキューピッド役になれってこと?」
ルルは胸の前で腕を組んだまま小首を傾げる。
「まあ、そういうことになるかな」
「そんなことでいいなら協力してあげるわよ」
急に立ち上がった少女はにんまりと笑顔を作って踏ん反り返った。素っ裸で威張られてもな。ともあれ得意分野なのか色恋沙汰に興味があるのか、こちらの身勝手な要求を嫌がらずに引き受けてくれたのはありがたかった。
「ありがとうな。じゃあ、明日の放課後にでも仲良くなりたい女子を確認してもらえるか?」
「任せなさい」
ルルは会心の笑顔で宣言した。なんの根拠もないが、とにかく凄い自信である。しかし仲を取り持ってもらおうとしている俺の立場からすれば心強いのも確かだった。
「それじゃあ、明日の放課後に学校で会おう」
「えーっと、どうしようかな」
態度を急変させた少女はぼそぼそと独り言を呟き始める。ここに来て「やっぱりなし」となっては一大事なので訴えかける声にも熱が帯びた。
「手伝ってくれるって言ったじゃないか?」
「いや、その恋のキューピッド役はいいのよ。そうじゃなくて明日学校で会おうってところが問題なのよね。あ、そうだ。今日ここに泊めてくれない? わざわざ魔界へ戻るの面倒臭いんだよね」
神様の存在を肯定された今となっては、大抵の存在なら受け入れられる度量が身に付いていた。俺はルルの妄想癖を疑う前に聞き慣れない用語について説明を求める。
「魔界ってなんだよ?」
「悪魔の棲んでいる世界なんだけど知らないの?」
二つ括りの金髪少女はぴんと人差し指を立てて解説した。俺は全裸のルルを改めて見やる。幼さを残した顔立ちに巨乳、柔らかそうな肌には透明感。碧眼というのも似合っている所為か違和感がない。うーん、この子が人間ではなく悪魔だって?
「説明してもらっていいか?」
「私は夢魔っていう悪魔なのよ。標的の好みに合わせた姿で現れて精子を搾取する悪魔――インキュバスとかサキュバスって言ったほうがわかりやすかった?」
「なにかの本で読んだ記憶があるな。確か繁殖能力を持たないから人間を媒体にして仲間を増やしていくみたいな悪魔だっけ?」
「そうそう。だから色恋沙汰は私に任せてくれれば万事解決よ」
「それにしてはセックスの知識が微妙だったような?」
俺の突っ込みにルルは盛大に反論した。
「夢魔にだって新人の時期はあるんだからね! 穢れを知らない夢魔に精子を搾取されるなんて滅多にないことなのよ。もっと感謝してもらってもいいくらいなんだから!」
なに切れだよ、まったくもう。俺は暴れ馬をあしらうように心の中で「どうどう」と呟いておく。ともかく話を進めたほうがいいだろう。
「わかったわかった。ありがとうな。それで夢魔の能力ってどういうのがあるんだ?」
「変身能力と飛行能力くらいしかないわ」
「飛べるのはいいな」
素直に感心する俺に少女は語を付け加えた。
「あー、それとあんた以外の人間には見えないようになってるからね」
「ん、どういうことだ?」
「言葉通りの意味よ。余計な人間に見られないほうが動きやすいでしょう?」
「まあ、それは確かにそうだな」
他人の家に音も立てず不法侵入できたのはそういう能力が関係しているのだろう。そんなことを考えていると室内に携帯のアラームが鳴り響いた。俺はベッドの傍らに設置されている棚の上から携帯を手に取る。そして今日が誕生日という現実を思い出した。また一つ厄介な出来事が生まれてしまった瞬間である。
「誕生日ってわかるか?」
「はあ?」
トイレに入ったら前の奴のウ○コが流されずに残っていたときのような険しい表情で睨まれた。そこまで怒るようなことは言ってないだろ。俺は少女の反応に辟易しながら首を左右に振った。
「いや、知らないならそれでいいんだ」
「知ってるわよ。なんで急にそんなこと聞くのかって思っただけだもの」
「今日、俺の誕生日なんだよ。それで携帯を最新機種に変更するために出かけたいんだが、ルルはここで留守番か一緒に出かけるかどっちがいい?」
嘘は吐いていない。機種変更をする予定は随分と前から決まっていたことだった。
「一緒に行くに決まってるじゃない。一人で部屋に残ってもつまらないもの。それに人間界の情報を収集できるいい機会だからね」
嬉々とした表情を浮かべるルルだった。しかし出かける前に一つだけ確認しておかなくてはならないだろう。
「……ところで服はあるんだろうな? 全裸で出かけるとか言うなよ」
「あるに決まってるでしょ! いくら人間に見えないからと言っても私は露出狂じゃないんだからね」
そう言うとルルはベッドから飛び降りた。綺麗な二つ括りの髪がふわりと宙を舞う。くるりと一回転すると清楚で真っ白なワンピース姿になっていた。どうやら夢魔という悪魔は想像以上に便利な能力を有しているらしい。欲を言えば黒を基調とした悪魔っぽいゴスロリ衣装になってほしかったが、ここでそれを主張したところでろくなことにならないだろう。
「これで文句ないでしょ?」
にこりと微笑みながら少女はスカートの裾を摘まむ。俺は鷹揚に首肯することしかできない。そんなわけで俺とルルは外出することになった。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。